2024年05月17日
特例子会社の障がい者雇用についてわかりやすく解説!|障がいのある方が働くメリットとは
目次
障がい者雇用枠で仕事を探していると「特例子会社」と書かれた企業をよく目にするのではないかと思います。
特例子会社は、障がい者の方の雇用を目的に設立された会社です。
この記事では、特例子会社の仕組みや年収、働くメリットなどについて詳しく説明します。
障がい者雇用枠での就職を視野に入れている方にとっては参考になる記事ですので、ぜひ最後までご一読ください。
特例子会社とは
特例子会社とは、障がい者の方の雇用促進と安定を図るために設立された子会社です。設立には厚生労働大臣の認可が必要であり、次の認定要件を満たさなければなりません。
【特例子会社の認定要件】
■親会社の要件
- 議決権の過半数を有するなど、当該子会社の意思決定機関を支配していること
■子会社の要件
- 親会社からの役員派遣など、親会社との人的関係が緊密であること
- 雇用される障がい者の方が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること
- 雇用される障がい者の方に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること
- 障がい者の方のための施設改善、専任の指導員の配置など、障がい者の方の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること
- 障がい者の方の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること
特例子会社の仕組み
特例子会社の制度ができた背景には、「障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)」に定義された「障害者雇用率制度」があります。
【障害者雇用促進法】
障がい者の方の職業の安定を図る目的でつくられた法律
- 障がい者の方に対する職業リハビリテーションの推進
- 障がい者の方に対する差別の禁止
- 対象障がい者の雇用義務に基づく雇用の促進
- 事業主による苦情など紛争の解決 など
【障害者雇用率制度】
従業員が45.5名以上在籍する事業主において、障がい者の方を次の割合以上雇用しなければならない制度
- 民間企業 2.5%
- 特殊法人など 2.6%
- 国・地方公共団体 2.6%
- 都道府県などの教育委員会 2.5%
上記のとおり、事業主は一定の割合で障害者手帳を持っている方を雇用する義務があります。しかし業種や会社の規模によっては、障がい者雇用枠の確保が現実として難しいケースも考えられます。
そこで障がい者の方の雇用を目的とした特例子会社を作ることで、障がい者雇用率の義務がクリアできます。
また障害の特性に配慮した仕事の確保・環境の提供がしやすくなり、これにより働く方の能力を引き出しやすくなるということも利点です。
特例子会社で雇用される障がい者の方は、親会社やグループ会社で雇用しているものとみなされ、法定雇用率を合わせて算定できる仕組みとなっています。
特例子会社の現状
ここ数年における特例子会社の推移は、次の表の通りです。
数字で表されているとおり、特例子会社の数は年々増加傾向であり、障がい者の方を雇用する機会も合わせて増加しています。雇用形態については特例子会社の6割以上が正社員で、契約社員やパートの割合は3割程度です。
特例子会社における平均年収
日本を代表するシンクタンクが行った調査によると、平均年収の分布は次の表の通りです。
【特例子会社における障がい者の方の平均年収】
平均年収 | 割合 | 平均年収 | 割合 |
1~50万円 | 0.5% | 301~350万円 | 6.1% |
51~100万円 | 0.0% | 351~400万円 | 2.0% |
101~150万円 | 19.7% | 401~450万円 | 0.5% |
151~200万円 | 33.8% | 451~500万円 | 0.5% |
201~250万円 | 26.3% | 500万円以上 | 0.0% |
251~300万円 | 10.6% |
参照元:「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果 」
ほとんどの方が100万円から400万円の範囲内となっており、約6割の方は151~250万円となっています。
特例子会社における業務内容
特例子会社の業務内容については「事務補助(79.1%)」「清掃・管理(50.0%)」が多く、次いで「機械・食品などの製造(23.5%)」「物流(20.4%)」となっています。
特例子会社で就労するメリット
最初に述べたとおり、特例子会社として認定を受けるためには一定の要件があります。これらの要件を満たして設立された特例子会社は、障がい者の方にとって労働条件の良いケースが多く見られます。
【特例子会社で就労するメリット】
- 雇用が安定している
- 障がいのある方が働きやすい環境が整っている
雇用が安定している
特例子会社では、安定した雇用を見込める場合が多いです。
特例子会社を設立するには厚生労働省の認可が必要となり、要件を満たすには最低でも25名以上の雇用が必要(うち5名以上は障がい者の方の雇用が必須)など厳しい条件があります。
その条件を満たす子会社を設立できる親会社は、比較的大手で資金の安定している企業が多いのが現状です。
親会社もコンプライアンス遵守の関係上、障がい者雇用枠の利用が必要となるため、長期的に安定した雇用が期待できるでしょう。
障がい者の方が働きやすい環境が整っている
特例子会社では障がい者雇用枠利用の目的で設立されている背景から、障がい者の方の働きやすい環境が整っている場合が多いのが特徴です。
特例子会社では、全従業員の20%以上を障がい者雇用枠にあてなければならない決まりがあります。そのため職場での合理的配慮を求めやすい環境となっており、自身の特性や体調にあわせた配慮が得られやすくなります。
【具体的な配慮の例】
- 勤務時間の調整
- 特性に合わせた職場への配置
- バリアフリー・手すり付きトイレなどの設置
- コミュニケーション方法(手話・筆談など)の配慮
- 相談窓口の設置 など
一般企業の障がい者雇用枠との違い
特例子会社と一般企業の大きな違いとしてあげられるのは、就業規則や環境整備となります。
特例子会社より圧倒的に企業数が多いこともあり、障がい者雇用枠のある一般企業で働くのも選択肢の一つとなります。
一般企業の障がい者雇用枠でも、合理的配慮を受けながら勤務できるという面では特例子会社と同様です。
しかしながら一般企業では、障がい者の方にあわせた制度や環境を整えるには時間やコストがかかるなど、必ずしも障がい者の方の受け入れ体制が整備されているとは限りません。
一方特例子会社では障がい者の方に合わせた制度や環境があらかじめ整っている場合や、変更に対しても柔軟な対応の取れる企業が多い傾向です。
障がい者の方への配慮を得られるのは同じですが、特例子会社はより幅広く対応してもらえるといった特徴があるといえます。
特例子会社へ就職するときのポイント
「特例子会社への就職も検討したい」と考えている障がい者の方にとって、知っておいたほうがよいポイントは次の2点です。
【特例子会社へ就職する時のポイント】
- 就労サービスを活用する
- 採用にあたって重要視されることを知る
就労サービスを活用する
障がい者の方が就職するにあたって、抱えている悩みや不安を相談できるサービスは次の通り数多くあります。
【障がいのある方が利用できる就労サービス】
- 就職移行支援事業所:特例子会社を含む一般企業へ就職したい方へ向けたスキルが学べる
- 地域障害者職業センター:職業訓練などの専門的な職業リハビリテーションを受けられる
- 障害者就業・生活支援センター:就業面や生活面でのサポートが受けられる
- ハローワーク:特例子会社を含む障がい者の方向けの就職の紹介が受けられる
- 転職エージェント:特例子会社を含む企業への就職に関する全面的なサポートを受けられる
それぞれの就労サービスにより、受けられるサポートは異なっています。自身の状況をよく見つめなおして、どのサービスがより自分のためになるかよく検討することが大切です。
採用にあたって重要視されることを知る
企業側が障がい者の方の方を採用するにあたって、どのようなことが重要視される傾向にあるのか知っておくと、就職活動をする上で役に立ちます。
【採用にあたって重要視されること】
- 働く意欲や熱意、自立への意欲
- スキルと職種のマッチング
- 「苦手なこと」「配慮が必要なこと」が明確に説明できるなどの自己の障がい理解と受容度合い
- 周囲との協調性 など
中でも「本人の仕事への意欲」を重視する企業の割合が圧倒的に高くなっています。自身が企業の採用者であると考えた際に、どのような人を採用したいかを念頭に挑むと、うまくいく可能性が高まります。
あくまでも一つの調査によるものであり、参考程度として考えておくとよいでしょう。
まとめ
特例子会社は障がい者雇用枠を利用するためにつくられる子会社であり、親会社には大手で経営が安定している会社が多くなっています。そのため障がい者の方にとって働きやすい環境が整っており、合理的配慮を受けやすいのが特徴といえます。
一般企業でも障がい者雇用枠をもうけている企業も多くあり、どちらが優れているとは一概にいえません。自身はどのように働いていきたいのかよく検討し、特性に合った企業を選ぶとうまくいく可能性が高まるでしょう。
本コラムを制作しているマイナビパートナーズも、特例子会社の一つです。特例子会社についてより詳しく質問してみたいことがあれば、ぜひマイナビパートナーズ紹介にご登録ください。
【本記事監修者】 佐々木規夫様 産業医科大学医学部医学科卒業。 |