2025年12月19日
おすすめ企業インタビュー|三菱重工グループ
三菱重工グループは、SDGsへの貢献をミッションに掲げ、障がい者雇用にも積極的に取り組んでいます。今回は、同グループの担当者にそれぞれの部署での障がい者雇用に対する基本方針や具体的なサポート体制、スキルアップの取り組みなどについてお話をお伺いしました。
目次
HR戦略部 人材開発グループ 採用チーム 大滝 惇史
HRマネジメント部 長崎HRビジネスパートナーグループ 中川 美香
HR戦略部 ワークスタイル変革グループ 勤怠・厚生チーム 竹内 ひな
人事部門インタビュー
HR戦略部 人材開発グループ 採用チーム
大滝 惇史

●障がい者雇用に対する貴社の基本方針について教えていただけますか?
三菱重工グループでは「社会課題の解決を通じて、企業価値を向上させ、中長期的に成長していく」ためには、「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)(※注1)」 の推進が不可欠であると考えています。
この考え方を社員にきちんと伝えるため、当社では「グローバル行動基準」「グループ人権方針」「DE&Iポリシー」を制定・公開しており、その中でもDE&Iの必要性や重要性を示しています。また、障がい者雇用については、スペイン語で「一緒に」を意味する「マノ・ア・マノ(mano a mano)」というポリシーを掲げて活動してきました。これは、障がいの有無に関わらず、”お互いの能力や特性を認めながら働こう”という姿勢を示しています。当社は、障がい者雇用の取り組みを通じて、長年にわたりインクルージョンを推進してきました。
(※注1)多様性(ダイバーシティ)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)を意味する言葉です。職場で働く人たちの性別、障がい、価値観など、さまざまな特性を尊重し、受け入れて、公平に活躍できる環境を整えようという考え方のことを指します。
●障がいをお持ちの方への支援制度やサポートについて教えてください。
かつては、職場への配属のみを念頭に置いて採用活動を行っていました。そのため、障がい特性への理解や、障がい特性を踏まえた適切な業務のアサインがうまくいかないケースもありました。そのような背景を踏まえて、2018年からは職場への配属に加え、地域や工場ごとに「集合配置職場」 を設け、より多様なニーズに応えた採用と配属ができるような体制を整えています。実績としてはまだ少数ではありますが、「集合配置職場」で一定の経験を積み、高いレベルで担当する業務をできるようになった方が、一般職場へ異動するというケースも出てきています。
また、2024年5月に公表した中期経営計画の中では、「ライフステージに合わせた柔軟な働き方の推進」や「社員の新たな挑戦支援」などを通じて、事業計画の達成をめざす方針を掲げました。これらの取り組みの中で、障がいをお持ちの方には、障がい特性を理由に一時的に勤務から離れることができる制度を新たに導入しており、通院やリハビリなど、障がいの状況に合わせた多様な働き方が実現しやすくなっています。

●具体的な障がい者の活躍事例を教えてください。
私が近くで見てきた最近の良好な事例としては、2024年4月に集合配置職場に入社した社員が思い浮かびます。本人の希望や能力を踏まえ、人事部門に異動した後、10月からは正社員として活躍しています。集合配置職場で働いていた時から、社内外の関係者との打ち合わせにも参加し、同僚ともコミュニケーションを取りながら、何事にも前向きに取り組む姿が印象的でした。異動先の職場では柔軟な働き方が進んでいるため、本人の体調や業務の都合に応じて、在宅勤務やフレックス制度を利用しながら活躍しています。
●会社として今後の課題はなんですか?
障がいに対して必要な配慮を講じることは当然のことですが、その上で当社としては必要以上に区別や配慮をしすぎないことも重要だと考えています。また、双方向のコミュニケーションによってお互いの理解を深めることも大切です。採用することがゴールではありませんので、今後は、このような意識を配属先の職場にもしっかりと定着させていく必要があると思います。また、今後もさまざまな障がい特性をお持ちの方をお迎えする中で、既存の設備や制度ではカバーしきれない課題が出てくる可能性があります。そのような課題に真摯に向き合い、解決を図ることも重要だと考えています。
障がい者雇用オフィス
責任者インタビュー
HRマネジメント部
長崎HRビジネスパートナーグループ
中川 美香

●長崎の業務チームについて教えてください。
私たち「業務チーム」は、障がいをお持ちの方を集中的に雇用する部署として、特例子会社のような役割を果たしています。他拠点の業務センターでは、現業系の軽作業や清掃作業を中心に行っていますが、長崎の業務チームは全拠点の事務補助業務を担っています。現在、約50名が在籍しており、5つの班に分かれて、郵便仕分けや資料作成、データ入力、プログラミングなどのさまざまな業務を遂行しております。
●障がい者のサポートはどのようなことを行っていますか?
合理的配慮として、障がい特性に応じた業務説明やサポートを行っています。例えば、聴覚障害をお持ちの方には手話や文字起こしソフトを使用、精神障害をお持ちの方には、図式化したマニュアルで説明しています。また、発達障害の方で周囲が気になるという方には、パーテーションを設置したり、イヤーマフの着用を許可したりしています。チーム内には、心理相談員、産業カウンセラー、企業在籍型ジョブコーチが在籍しているため、業務面や体調面などの悩みを相談しやすい環境です。

●スキルアップに関する制度はありますか?
スキル向上支援として、「ステップアップシート」という1年間の目標設定の仕組みを設けています。具体的には、年度初めに定めた目標に対し、「どのように進めていくのか」について、上司とリーダーですり合わせ面談を実施しています。また、目標の達成状況についても再度面談を行い、来年度の給与に反映させるという仕組みを採用しています。業務チームでは、働くメンバー一人ひとりに合わせた支援を心がけており、安定した出社が難しい方には、まず出社することを目標にしてもらっています。安定した出社ができるようになったら、次は毎日の定例業務ができるようになること。それができるようになったら、今度は業務改善に取り組む。そして、次のステップは依頼元部門への業務改善提案ができるように進んでいく、このように、一歩ずつステップアップしていく形を取っています。
もし、ステップアップされた方の中で「一般職場で働きたい」という方がいらっしゃれば異動することも可能です。一般職場に慣れるまでは、業務チームから企業在籍型ジョブコーチが出張して支援を行っています。
●障がい者採用における求める人物像について教えてください。
まず、1点目は「安定して働けること」です。具体的には、自分で体調管理ができる、精神面でのセルフコントロールができることが求められます。2点目は「素直さ」です。他人の意見を聞き入れることができるか、環境の変化に対応することができるかということが重要になります。そして、3点目が「自己理解ができている」ということです。つまり、障がいをきちんと受け入れていて、自分にできることとできないことを把握できているかという点を重視しています。

●これまでに印象的なエピソードはありますか?
三菱重工では「社員意識調査」というものがあり、以前、業務チームのエンゲージメントが課題となっていた時期がありました。そこで私たち業務チームはプロジェクトとして、メンバーを人選し、エンゲージメント向上に取り組むことになりました。その結果、1年間でエンゲージメントが70%から87%まで引き上げることができ、現在では、90%越えを目指して活動を継続しています。
この成果は、プロジェクトメンバーからの一方通行の取り組みではなく、プロジェクトに参加していないメンバーにも当事者意識を持ってもらい、巻き込むことができたからだと考えています。その過程では、リーダー向けリーダーシップ研修や、ファシリテーター研修、メンバー向けコミュニケーション研修に加えて、チーム内グループディスカッションの風土など、これまで学んできたことが大いに役立ちました。メンバーの自主的な取り組みに加えて、会社側のサポートが相乗効果を生み出し、結果につながったと感じています。
先輩社員インタビュー
HR戦略部 ワークスタイル変革グループ
勤怠・厚生チーム
竹内 ひな(2025年入社)

—新卒での就職活動で「車椅子で働けるのか」という不安を抱えていた竹内さん。会社探しのポイントは “在宅勤務を利用しながら活躍できる環境”であり、三菱重工は竹内さんの要望を快く受け入れてくれたそうです。そして、入社後も適切な配慮を受けることはもちろん、業務上必要な指導やアドバイスなども、竹内さんにしっかりとフィードバックしてくれています。
竹内さんは今回のインタビューで、こんな思いを語ってくれました。「障がい者の就職活動は、自分から情報を探しに行かないと分からないことが多いんです。この記事を通して、障がい者の働き方をもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。」
●現在のお仕事
・就業規則における通勤交通費・旅費制度の担当として、制度の企画・運用、関連システムの運営やデータの整備等
・所属グループ内の経費精算、名刺作成をはじめとした庶務業務
● 企業選びで重視したポイントについて教えてください。
就職活動を進める中で、「体力的に、毎日出社するのは難しいのではないか…」と思うようになりました。そのため、在宅勤務制度を利用できる環境があるかどうかを、自分の中で最優先事項と考えました。三菱重工の面接では、私の求める配慮を聞くだけでなく、話を聞いた上で、面接官から「こんな働き方はどうですか」と具体的な働き方のイメージを提示してくれました。面接を通じて、障がいに寄り添ってくれる環境があるのではと感じ、入社を決めました。
● 入社後、難しかった業務はありましたか?
専門用語の多さや、会社のルールを覚えたりすることに難しさを感じるのはもちろんですが、入社して驚いたのが、人事データのボリュームがとにかく多いことです。三菱重工グループは連結で7万人、単独でも2万人を超える社員が勤務しており、多種多様な人事データを扱う必要があるため、Excelの四則計算はもちろん、VLOOKUPやデータ抽出のやり方を覚えました。今思えば、大学時代にもっとPCスキルを磨いておけば、より効率的に作業ができたかもしれないな…と思います。
● どうやって乗り越えたのですか?
新入社員に対して、職場の先輩社員が育成担当者としてついてくださるので、その方に質問したり、マニュアルを見たりしながら業務を進めたりすることで対応しています。また、障がいの有無には直接関係ないかもしれませんが、分からないことがあればすぐに質問できるように、育成担当者が私の隣に着席頂いています。オフィス全体としてはフリーアドレスが導入されていますが、私を含めた新入社員については、近くに育成担当者が座れるように配慮されているので、安心して仕事を進められています。
● OJTで印象に残っているアドバイスはありますか?
育成担当者の方から言われた「メモを取って、まとめることも大事だよ」という言葉が印象に残っています。私は障がいの関係で手先の筋力が弱く、手書きだと字が崩れやすかったり、時間がかかったりするため、耳で聞いて覚えられるタイプと思っていました。ところが、入社後に担当業務が少しずつ増えていく中で、一度聞いただけでは十分な理解が難しい場面や、後から振り返って確認したいと思う場面があり、困ることがありました。そんな時に育成担当者からメモの重要性を教えていただき、確かにその通りだと気づかされました。今はパソコンでメモを取るようにしていて、効率よく作業できています。

● 現在の職場で働く上で利用できる制度や、環境面でのイチオシポイントを教えてください。
◎柔軟な働き方が可能な勤務制度
在宅勤務やフレックスタイム制など、通院や体調に合わせた柔軟な働き方が可能
◎フレックス制度:朝の通勤負担を軽減
完全バリアフリーのオフィス:段差はほぼなく、主要なドアは自動ドア
◎駅直結の丸の内本社ビル
地下通路からエレベーターでアクセス可能
◎定期面談によるキャリアサポート
全社員を対象に年数回実施
在宅勤務やフレックスタイム制は、一般社員の皆さんも利用されており、本当に気兼ねなく利用できています。三菱重工グループはモノづくり企業であり、出社を原則とした働き方を基本としていますが、例えば、通院がある日は半休を取り、通院が終わり次第、在宅で勤務するなど、必要に応じて出社と在宅を効率的に組み合わせた働き方もできるため、とても助かっています。ちなみに、休暇については、三菱重工では1時間単位で休暇が取れる「時間単位年休」が使えることもイチオシポイントと思います。
● 三菱重工グループで働く魅力はなんですか?
三菱重工グループは社会インフラに関わる大規模な事業を展開している会社です。そんな大きな会社に、人事という立場から携われることは、本当にありがたいことだと感じています。日々寄せられる社員の皆さんからの相談や取り扱う人事データの件数を見ていると、こんなにもたくさんの人たちが働いている会社なんだ…と圧倒されることもあります。一方で、「私ももっと勉強しながら、担当業務を通じて社会に貢献しないといけないな」と思える会社です。
● 最後に、同じような不安を抱える方へのメッセージをお願いします。
障がいのある方、特に自分と同じような車椅子を利用されている方は、バリアフリーの観点から働ける場所が限られてしまうかもしれません。でも、「働きにくい」と感じることがあるなら、遠慮せずに希望を伝えることが大事だと思います。私は会社説明会や面接の際、「車椅子で勤務することは可能でしょうか」と確認するようにしていました。すると、会社によっては「申し訳ございませんが、建物の構造上、車椅子での勤務は難しいです」という丁寧な回答をいただくこともあり、勇気を出して確認したことで、入社後のミスマッチを防ぐことができました。
このように自分の希望を伝えることで、その会社でできること、難しいことがわかり、自分の企業選びのポイントが明確になってくると思います。焦ることなく、自分のペースで選んでみてください!