2024年06月28日
うつ病かもしれないと思ったらどうする?仕事中に現れる症状や仕事を続けるときのポイントを解説します
目次
「最近、仕事をするのがしんどくなってきた」「職場へ行けない」「気分が晴れない」
そのように感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。その状況が長く続く場合、一時的な体調不良ではなく「うつ病」が原因かも知れません。
この記事では、うつ病によくみられる症状と、うつ病かもしれない時の対策を解説しています。
うつ病と診断された場合に克服するポイントにも触れていますので、うつ病かもしれないと悩まれている方は、ぜひ最後までご一読ください。
うつ病かもしれない?主な症状とは
うつ病は、気分に影響され日常生活に支障をきたす「気分障害」に分類された精神疾患のひとつです。
抑うつ状態(気持ちが落ち込み憂うつな気分の状態)が強く続き、一定の基準を満たした場合に、うつ病との診断がなされます。
うつ病によって、日常生活において、長期にわたって困難や制限がある人は「精神障害者保健福祉手帳」の対象です。手帳の申請は、各市町村の窓口で行います。
うつ病によくみられる症状
うつ病によくみられるおもな症状は、次のとおりです。
【うつ病の主な症状】
身体面の症状 | ●不眠・過眠 ●疲労感が抜けない ●体重が短期間で大きく増減する ●動悸、めまい、頭痛 など |
精神面の症状 | ●気分が落ち込む ●生きていても意味がないなどと考える ●物事への興味が薄れる ●喜怒哀楽が薄くなる など |
行動面の症状 | ●家にこもりがちになる ●人との関わりを避けがちになる ●外見を気にしなくなる ●飲酒量の増加、食欲不振・過食 など |
これらはうつ病の初期症状としてよくみられます。当てはまる症状が増えていくことで、悪化してしまう可能性も考えられます。
仕事中にみられるうつ病の症状
仕事中によくみられるうつ病の症状としては、次のとおりです。
【仕事中にみられるうつ病の症状】
- 同僚や職場社員とのコミュニケーションが減る
- 体調が安定せず遅刻や早退が増える
- 小さなミスが増える
- 考えがまとまらなくなる
- 些細な判断や決断ができなくなる
- 常にイライラしている など
上記の症状は、日々の体調や気分によって誰にでも起こりえることです。
しかし、これらの症状が複数あり、続くようであれば、精神科や心療内科を受診してみるとよいでしょう。
うつ病かもしれないと思った時にすべきこと
先ほどあげた症状によって、仕事にも支障をきたし始め「自分はうつ病かもしれない」と感じたときは、次にあげる方法をとってみるとよいでしょう。
【うつ病かもしれないと思ったすべきこと】
- 職場の制度を利用する
- 規則正しい生活を送る
- 自分のペースを守り無理をしない
- 心療内科や精神科へ行く
職場の制度を利用する
現在の職場にうつ病の対策ができる機関や制度があれば、利用してみるのもよい方法です。
【職場のメンタルヘルス制度】
- 産業医への相談
- メンタルヘルス研修を受ける
- ストレスチェック制度を利用する
産業医への相談
産業医とは、従業員が健康で安全に働くことができるよう、医療の専門的立場から指導や助言をする医師です。
常時50名以上の労働者がいる事業場では、産業医の選任が法律で義務づけられています。
産業医は、次の職務を実施するとされています。
- 健康診断・面接指導の実施、および労働者の健康維持に関する業務
- 健康教育、健康相談
- 労働衛生教育
- 労働者の健康障害の原因調査・再発防止のための措置
もし、仕事をするうえで健康上の不安があれば、仕事と治療を両立させるための相談が可能です。
産業医への面談の申し込み方法は、企業によって異なるため、職場の窓口(総務など)に確認しましょう。
メンタルヘルス研修を受ける
メンタルヘルス対策として、企業では一般職の従業員向けにセルフケアを目的としたメンタルヘルス研修を行うことがあります。
メンタルヘルス研修を受講することで、次のような内容を学ぶことができます。
- ストレスへの気づき
- ストレスへの対処法
- 社内のメンタルヘルスの支援体制
- リラクゼーションやマインドフルネス など
メンタルヘルス研修の実施によって、職場でのメンタルヘルスへの理解が深まり、ストレス軽減の環境作りを図れます。
メンタルヘルス研修は努力義務であり、すべての企業が実施しているわけではありません。しかし、自身や同僚の不調を発見するという意味でも有効な施策です。
企業にメンタルヘルス対策が求められている現在、取り組む企業が今後は増加すると考えられます。もし自身の勤め先で実施されている場合は、積極的に受講しましょう。
ストレスチェック制度を利用する
ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレス状況を検査し、個人のメンタル不調のリスク低減を目的とした制度です。
常時50名以上の労働者がいる事業場では法令により実施が義務づけられています。なお、50名未満は努力義務となっています。
ストレスチェックの対象者は、常時勤務しているすべての労働者です。
フルタイムのパートやアルバイトでも条件を満たしている場合(労働時間が通常労働者の4分の3以上、勤務期間が1年以上)は、ストレスチェックの対象です。
事業者には、ストレスが高いと診断された従業員に対して医師による面接指導を実施し、必要に応じて作業の転換・労働時間の短縮などの措置が求められます。
ストレスチェックはストレスへの気づきを目的として実施します。正直に答えることで自らのストレス状態を適切に把握でき、ストレス低減のための対策をとることができるでしょう。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活は、うつ病の対策として効果的です。
うつ病の要因として、ストレスや過労が関わっていると考えられています。生活習慣の乱れはストレスや疲れを引き起こし、うつ病の症状悪化を引き起こしかねません。
ストレスや疲労をためないためには、規則正しい生活が重要です。十分な睡眠時間を確保するだけでも、ストレスや疲労が軽減して症状の軽快につなげられます。
その他、軽い運動をしてみる、体調がすぐれないときはゆっくり休むなど、リラックスできる時間も大切にするようにしましょう。
自分のペースを守り無理をしすぎない
仕事では自分のペースを守り、決して無理をしすぎないようにしましょう。
体調が優れない状態で無理に仕事を続けると、症状が長引いたり、悪化するリスクが高まります。
症状がひどくなり仕事が続けられない場合は、治療に専念して回復後に仕事に復帰するのも必要な選択です。
仮に仕事に復帰できずに退職をすることがあっても再就職することも可能です。
実際に、就労支援サービスなどを上手に利用して、社会復帰する方も多くいます。自身の体調を踏まえ、将来を見据えた選択をするようにしましょう。
心療内科や精神科へ行く
うつ病ではないかと感じたら、早めに心療内科や精神科などへ行くことをおすすめします。
「まだ我慢できるので大丈夫」「仕事が忙しく通院の時間を取れない」などと受診を後回しにしていると、症状が悪化する可能性も否定できません。
うつ病に限らず精神疾患は、早めに治療を始めることで早期の改善を期待できます。症状がひどくなる前に、専門医を訪問して相談するようにしましょう。
仕事をしながらうつ病を克服するためのポイント
うつ病が悪化すると、心身ともに休養が必要になるケースも少なくありません。
しかしながら、治療と仕事を両立しつつ病気とうまく付き合って克服することも可能です。ポイントとしては、次の3点があげられます。
- 自身の症状を理解する
- 周りの人の理解を得る
- 寛解を目指す
自身の症状を理解する
仕事を続けていくには、自身の症状をよく理解しておくのが大切です。
うつ病の症状は、個人によって異なります。自身にはどういった場合にどのような症状がでるのか知ることで、あらかじめ対処法を立てておけます。
仕事をするうえで、症状を悪化させないのは非常に重要です。調子が悪くなりそうな兆候がみえた場合、早めの対策も可能となります。
自己分析が難しい場合は、主治医に聞いてみるのもひとつの方法です。
周りの人の理解を得る
周囲の人に対して、自身の症状について理解を得るようにしましょう。
うつ病の症状は周囲からみるとわかりにくく、怠けていると誤解されることもありえます。
そういった事を避ける意味でも、周囲に自身の症状を理解してもらえるようにしておきましょう。
もし伝えにくい場合は、主治医に診断書を書いてもらうなど、具体的に伝えられる方法をとりましょう。
寛解を目指す
仕事と並行して治療を継続することで、うつ病の寛解を目指します。
寛解とは、一時的に症状がなくなり落ち着いている状態のことです。
たとえば、骨折した場合は骨がくっつくと、自然に再発する可能性は極めて低いと考えられます(これを「治癒(ちゆ)」と呼びます)。
うつ病は、症状がなくなっても完全に治ったかどうかの確認は困難です。そのため、再発を防いで安定した状態を長く続けることを目指します。
うつ病は、適切な治療によって寛解し、休職・退職していた仕事にも復職が可能となります。
復職後は再発防止に努め、再度うつ病を発症させない対策が必要となるでしょう。
まとめ
「自分はうつ病かもしれない」と感じたら、最初は誰かに相談してみるのをおすすめします。
事業所内に産業医などの相談窓口があれば利用し、なければ専門医の診察を早めに受けるとよいでしょう。
とはいえ、うつ病と診断されても仕事を休むのは難しいと考えてしまうかも知れません。
しかし、無理に仕事を続けると症状が悪化し、さらに状況が深刻になる可能性もあります。
一人で悩みを抱え込まず、周囲へ相談しながら治療を続けるのが大切です。
自分の症状を把握し、場合によっては少し休みながら、焦らずに職場復帰できるようにしましょう。
【本記事監修者】 佐々木規夫様 産業医科大学医学部医学科卒業。 |