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お役立ちコラム

障がい者雇用に向けたマッサージルーム開設の意義|視覚障害のある方に働く場を

 

目次

社内マッサージルームとは、ヘルスキーパーと呼ばれる視覚障害のある方が社員へマッサージを提供する場のことです。社員の健康促進や企業へのエンゲージメントの向上、それに障がい者雇用の法定雇用率の達成などさまざまな効果が見込めると言われています。今回は社内マッサージルームの開設コンサルティングを行っているKindAgent(カインドエージェント)株式会社 代表取締役 茅原亮輔様とマイナビパートナーズ紹介の守屋様より、社内マッサージルーム開設の流れや効果、マイナビパートナーズ紹介と組むことで実現できる相乗効果について話していただきました。

障がい者雇用に関するコンサルティング業務を展開

カインドエージェントが展開しているサービスを教えてください

茅原様:カインドエージェントは、障がい者雇用に関わるコンサルティングを行っている企業です。主な業務内容は大きく分けて2つあり、障がいのある方々に向けたインターンシップの提供、そして社内マッサージルームの開設コンサルティングです。

まずインターンシップとは、障がいのある方が実際の企業で一定期間トレーニングする機会を提供することで、人材育成や能力開発を目的に行っています。いわゆる人材育成型の障がい者雇用の課題解決方法と言えるものです。

もう一つは社内マッサージルームの開設コンサルティング業務です。企業から依頼を受けて、マッサージルームの開設に向けた法的な課題の解決や社内周知、視覚障害のある方の採用のサポートなどをしています。

これまでに80社以上の企業でマッサージルームの開設をサポートしてきました。こちらは今回のメインテーマなので、この後詳しくお話します。

障がいは社会の側にあると感じた出来事

社内マッサージ開設コンサルティングを始めたきっかけを教えてください

茅原様:私が障がい者雇用の業界に入って初めて担当した方がきっかけとなりました。10年近く前になるのですが、障がい者雇用で就職や転職する方のサポートをするという仕事を始めて、最初に担当したのがヘルスキーパーと言って、会社内でマッサージなどを担当する職種を目指す視覚障害のある方でした。

ヘルスキーパーは「企業内按摩師」とも呼ばれる専門的な職種なのですが、私はその時まで存在を知らず、初めてこのような職があることを知りました。その方の就職活動をサポートしていて一度は内定が出たのですが、会社が入っているビルのオーナーから盲導犬の入館は遠慮してほしいという話が急に出まして。オーナーやテナント会社などといろいろと交渉をしたのですが、結局は内定が取り消しになってしまいました。

その一連のやり取りの中で、一番誠実に話をしていたのが視覚障害のある当事者の方だったのです。あらゆる方に理解を示して、自身に出来ることを全部してくださって。そういった姿を見ていて、「障がいとはなんだろう」「障がいは社会の側にあるのでは」と考えるようになりました。

その件があって視覚障害のある方のサポートやヘルスキーパーの就職支援をしたいと強く思うようになり、現在では公私ともにライフワークとしております。

そういった経緯があり、2022年に会社を立ち上げてから社内マッサージルームの開設コンサルティング業務を始めることにしました。

コロナ渦で視覚障害のある方に大きな影響が生じた

カインドエージェントを立ち上げたきっかけを詳しく教えてください

茅原様:そもそも会社を立ち上げたのは、コロナ渦で視覚障害のある方に大きな影響が出たことも理由としてありました。

コロナ渦になり、リモートワークが進む中で社内マッサージルームの需要が低くなり、ヘルスキーパーである視覚障害のある方の業務も少なくなってしまいました。

私自身そのときには他の企業で障がい者雇用のコンサルタントとして働いていました。しかし、これまでずっとヘルスキーパーの方々に大変お世話になっていながら、なぜ何も力になれないのだろうとすごく課題感や焦りを覚えたのです。そして、自分が何とかしなければと強く思い、会社を立ち上げることにしました。

マッサージルームは社員の健康管理や障がい者雇用の促進に繋がる

社内マッサージルーム設置の効果を教えてください

茅原様:社内マッサージルームの効果として、一番は社員の健康に貢献できるということです。

マッサージによって直接的に健康になるということもありますし、健康への意識づけという意味でも非常に効果があると思っています。社員一人ひとりの健康意識が高まることで、セルフケア能力の向上にも繋がっていき、業務の生産性への効果も見込めると考えています。

健康意識とともに、企業にとっては視覚障害のある方を雇用することで障がい者雇用対策になるというメリットもあります。社内で障がい者雇用を始めようとなったときに、現実問題として「どうやって受け入れよう」と構えてしまいがちです。しかし、マッサージルームを設置するという目的をもって進めていくと、マッサージを受けることができるというプラスの効果が分かりやすいため、結果としてスムーズに障がい者雇用が進んでいくということも多くあります。

それにヘルスキーパーはマッサージのプロなので、入社後もマッサージを受けた社員がリスペクトするようにもなり、お互いが敬意をもって働くという関係性が築かれることも多いと感じています。

【社内マッサージルーム開設による効果】

  • 社員一人ひとりの健康意識が高まる
  • 務の生産性向上につながる
  • 障がい者雇用を促進できる
  • 障がいのある社員と他の社員が良好な関係性を築ける

社内マッサージルーム開設の3ステップ

社内マッサージルーム開設の流れを教えてください

茅原様:社内マッサージルームを開設するには、大きく分けてハード面、採用面、ソフト面の3つのフェーズに分かれています。

【➀ハード面(マッサージルームの開設)】
茅原様:まずハード面ですが、マッサージルームは法令によって何平米以上の広さがなければいけないなどの決まりがあります。ただ、なかなか企業内で熟知している方も多くないと思いますので、法令に則ったハード面のアドバイスをしています。それだけではなく、カインドエージェントにはインテリアコーディネーターがおり、その会社に合わせたマッサージルームの内装や照明などのアドバイスもさせていただいています。

【➁採用面(採用から入社までのサポート)】
茅原様:人材採用ではヘルスキーパーと呼ばれる視覚障害のある方の採用のサポートをしています。単に人を紹介するということではなく、例えば面接するにあたって視覚障害のある方とどうコミュニケーションを取るのか、試験をどう受けてもらったらいいのかといった具体的なことに対して、企業、応募者ともにサポートをしています。

内定後のサポートもしていて、最近では最寄り駅から会社までの道を実際に歩いてみて、どこまで点字が続いているか、信号はいくつあり音声で知らせてくれるタイプかということを調べました。そのうえで、一番安全なルートを内定者に伝えるといったことも行いました。

【⓷ソフト面(マッサージルームの稼働)】
茅原様:最後にソフト面ですが、社内マッサージルームを開設する前の社内への周知方法や、開設後の運用ルールの整備などのサポートをしています。ただ周知するだけでは社員はなかなか利用してくれないため、まず役職が上の方に実際に使ってもらったり、パートやアルバイトの方に利用してもらったりして「使ってもいいんだ」という雰囲気を作るといったことなどをサポートしています。

この3つのフェーズを合わせて依頼から社内マッサージルームを開設するまでに、大体3か月くらいかかることが多いですね。

障がい者雇用において目指す方向性が一緒だった

マイナビパートナーズ紹介と組んだきっかけを教えてください

守屋:2022年の秋くらいにマイナビグループにいる私の後輩から、「面白い人がいるから会ってみないか」と紹介を受けました。

ちょうど私も障がい者雇用におけるコンサルティングや問題解決に取り組んでいたところだったので、紹介を受けてすぐ会うことにしました。

実際会ってみると茅原さんとは障がい者雇用において目指す方向性が非常に似ていると感じて、すぐに「一緒にやりましょう」という話になりました。

カインドエージェントさんとは3つのフェーズすべてで連携させてもらっています。まず、マイナビパートナーズ紹介も社内マッサージルームを開設していて、運用しているノウハウがあります。そのこともあって、他の企業から障がい者雇用や社員の健康促進などを相談されたときに、カインドエージェントさんを紹介するということがあります。

【ハード面での取り組み】
守屋:ハード面については、カインドエージェントさんが法令に基づくアドバイスや保健所への届け出のサポートをしているのに対して、マイナビパートナーズ紹介では実際に運用した経験を基にしたアドバイスなどをしています。例えばどのような備品が必要なのかといった運用しているからこそわかることを伝えています。

【採用面での取り組み】
守屋:採用に関してもタッグを組んで取り組んでいます。マイナビパートナーズ紹介ではインターネットを通じて全国の方が登録しているので数多くの方を紹介し、カインドエージェントさんでは独自のネットワークを通じた人材の紹介をするという、空中戦と地上戦のような形でそれぞれの強みを生かして、その企業に合う人材の紹介を行っています。

【ソフト面での取り組み】
守屋:ソフト面もハード面と同様に、マイナビパートナーズ紹介として実際に運用している事例をお伝えしています。予約方法にしても、直接何か紙に書くのか、ネットを通じて行うのか、その際に社員の個人情報の管理をどうしているかといったことを、経験をもとに伝えて参考にしてもらっています。ただ、もちろん企業によってマッチする方法があるので、マイナビパートナーズ紹介の事例を伝えた上でカインドエージェントさんから「こういう事例もありますよ」と伝えることで、その企業に合った方法を作っていくようにしています。

茅原様:マイナビパートナーズ紹介さんは実際に社内マッサージルームを運用しているため、事例がとてもリアルで企業に提案するときにとてもありがたいですね。運用していく中で色々な取捨選択をしてきた経験も伝えてくれるので、企業にとってもイメージしやすいと思います。カインドエージェントでは伝えきれない部分なので連携させてもらってとても助かっています。

守屋:マイナビパートナーズ紹介が具体的な事例を伝えて、カインドエージェントさんがその他の選択肢も伝えるという、お互いも持ち味を活かせる関係性だと思っています。

「無意識の偏見に気づけた」と言ってもらえてうれしかった

社内マッサージルーム開設の事例を教えてください

守屋:カインドエージェントさんと組んでマッサージルームを開設した事例を2つお話しします。

【事例➀障がい者雇用の法定雇用率を満たすためにマッサージルームを開設】
守屋:まず、障がい者雇用の法定雇用率を満たさなければいけないという企業から相談を受けたケースです。話を聞いていくと、新型コロナが収まってきたから出社を促したいという要望と、社員の健康意識も向上させたいという要望もあることがわかったため、社内マッサージルームの開設をしていこうという話になりました。

社内マッサージルームを開設した後にその企業の人から「やってよかった」と言ってもらえました。その理由としてはいくつか挙げていたのですが、一番大きいのは視覚障害のある方を雇用してみて、無意識に持っていた偏見があることがわかった、視野が広がったという話をしていて私もうれしくなりました。

【事例➁本社と地方の工場の2か所でマッサージルームを開設】
守屋:もう一つは本社と地方の工場の2か所で開設したという事例です。その企業も法定雇用率についての相談から始まったのですが、従業員のエンゲージメントを高めたいという要望もあったので社内マッサージルームを開設しようという話に進んでいきました。

話していく中で本社だけでなく、生産現場も含めて取り組んでいこうとなり、大阪にある本社だけでなく、地方にある工場でも社内マッサージルームを作ることになりました。

その工場のある地域ではまだ社内マッサージルームの開設をほとんどしたことがなかったのですが、カインドエージェントさんとマイナビパートナーズ紹介で連携して、地上戦と空中戦で応募者を集めて採用を進めていきました。

視覚障害のある方の働く場の開拓をしたい

今後の展望を教えてください

茅原様:今後の展望としては視覚障害のある方の処遇改善、働く場の開拓をもっと進めていきたいと考えています。まだまだできていないところだと思っているので、まずはそこに最大限注力していきたいですね。

長期的なところでいえば視覚障害のある方が就労を通じて自己実現をしていける社会、もっと言えば障がいの有無に関わらず誰もが自分の強みを活かして自己実現ができる社会を作っていきたいと考えています。

そのためにもマイナビパートナーズ紹介さんの事例ももっと広めていきたいですね。マイナビパートナーズ紹介さんの事例を他の企業にも伝えていくことが、視覚障害のある方の職域を広げることにもつながっていくと思っています。

守屋:私たちは「誰もが心地よく活躍するための道を創る」という目標を掲げていて、社内マッサージルームの開設はまさにその目標に合致する取り組みだと思っています。実は視覚障害のある方ってわかったふりをされることが多い障がいなんですよね。「目が見えないんでしょう」という風に、無意識の偏見を受けることが多いと感じています。

だからこそ現在では視覚障害のある方の活躍するための道が閉ざされていることも多いため、そこを切り開いていく必要があると思っています。それにはやはり、マイナビパートナーズ紹介のノウハウを伝えていって、視覚障害のある方の実際の姿を知ってもらうことが大切だと考えています。カインドエージェントさんとは今後も社内マッサージルームの開設を通して、一つでも多くの企業へ働きかけていき、道を創るということを続けていきたいですね。

茅原様:究極的には、人を動かすのは想いであったり熱量であったりすると思っています。障がい者雇用の分野ではまだ偏見や思い込みもある中で、やはり熱意を持って伝えていくことが非常に大事だと考えています。マイナビパートナーズ紹介の守屋さんをはじめ、皆さんは目標が明確で熱意もあり、一緒に働くことができて頼もしく思いますし私自身も影響を受けています。

茅原亮輔 様
KindAgent株式会社
代表取締役
 
栃木県出身。慶應義塾大学を卒業後、衆議院議員茂木敏充事務所にて秘書を務める。退所後、障がい者専門の人材紹介会社である株式会社ゼネラルパートナーズに入社。コンサルティング室立ち上げに参画し、障がいのある方の雇用支援に尽力。その後はパーソルチャレンジ株式会社にて同じく障がい者雇用領域業務に従事。退職後独立を志し、障がい者や働く事に工夫が必要な方が幅広く活躍出来る社会の実現を目指して、KindAgent株式会社を設立、代表取締役に就任。

 

守屋 優
株式会社マイナビパートナーズ
総合企画開発部 部長
 
2009年、株式会社毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に新卒入社。長野支社にて5年間、新卒領域の新規開拓営業を担当。その後、東京本社の大手企業担当セクションに異動し、8年間新卒採用の成功に向けたコンサルティング業務に従事。
2022年より株式会社マイナビパートナーズ(マイナビ特例子会社)に出向し、同社にて障がい者専門の人材紹介サービス(マイナビパートナーズ紹介)、法人向けコンサルティングサービス、障がい者手帳を持つ大学生の育成プログラム(長期インターンシップ)を扱う部門の事業責任者として従事している。

 

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マイナビパートナーズ紹介は、マイナビグループの特例子会社である株式会社マイナビパートナーズが手がける、障がい者に特化した求人紹介サービスです。

マイナビパートナーズは設立から4年で100名以上の障がい者を採用してきました。そのノウハウと経験から、障がい当事者には適職をご紹介し、採用企業には、障がい者が活躍できる環境づくりのサポートを行っています。

障がい者本人が思いもよらぬ能力を発揮し、成果を出すところを私たちは目の当たりにしてきました。ひとつの求人と出会い、働くことで輝いていく姿は、なにものにも替えがたいものです。マイナビパートナーズ紹介は、これからも障がい当事者と企業の橋渡しをすることで、社会に貢献していきます。

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