2024年04月25日
障がい者にできる仕事の見つけ方は?業務切り出しのプロセスや具体的な方策

目次
- 広く障害のある方の就職サポート
- 創りたい世界が同じだと感じてタッグを組むことに
- 未来の業務を切り出す
- 業務切り出しは土台作りが大事
- それぞれの得意な面を活かした連携
- キャリアを作っていくことが大事
- 障がいのある方を社会に送り出していく
- 障がいのある方をどう1人の人としてとらえてもらうか
障がい者雇用をする際に「どんな業務ができるのかわからない」「どのタイミングで業務を増やしていくか悩んでいる」と、業務の切り出しや職域開拓で悩んでいる担当者の方も多いと思います。
今回は障がい者雇用のコンサルティングで数々の企業と関わってきた株式会社エンカレッジ 代表取締役 窪 貴志様とマイナビパートナーズ紹介の守屋 優様からお話を伺い、業務切り出しのポイントや職域開拓の流れ、エンカレッジ社とマイナビパートナーズ紹介との連携により実現できたことなどを紹介します。
広く障害のある方の就職サポート
エンカレッジ様が提供しているサービス内容を教えてください
窪様:エンカレッジは主に障がいのある方の就職のサポートをしている法人です。大きく分けて障がいのある学生や求職者、企業、大学、行政向けのサービスを展開しています。
学生向けとしては、「働くチカラPROJECT」という名称の就職に向けたサークル活動のようなものや、「家でも就活オンライン」という就活サイトを運営しています。求職者向けには「就労移行支援事業所」といって、障がいのある方への訓練をしている施設の運営をしています。
企業や行政向けには、障がい者雇用に関するコンサルティングを行っています。具体的には今回のテーマである障がいのある方の業務切り出しを通じた職域開拓などのサポートを提供しています。
障がい者雇用のコンサルティングでは、企業からは「何から始めたらいいのかわからない」という相談をいただくことが多いですね。
法定雇用率の達成のためにこれから障がい者雇用をしようとなっても、そもそも障がいのある方ってどういう方なのかイメージがつかないという場合もよくあります。そこで不安になって相談してくださるという感じですね。
その中でも「どういった業務を任せたらいいのかわからない」ということで悩んでいる企業が多い印象です。
創りたい世界が同じだと感じてタッグを組むことに
エンカレッジ社とマイナビパートナーズ紹介が組んだきっかけを教えてください
守屋:2022年の秋ごろに、繋がりのある企業から「エンカレッジさんとは絶対に繋がっておいた方がいい」と紹介され、実際にお会いしたのが最初のきっかけです。
マイナビパートナーズ紹介では「誰もが心地よく活躍するための道を創る」というミッションを掲げているのですが、実際にエンカレッジさんにお会いした時に創りたい世界が同じだと感じました。
窪様:そうですね、最初にお会いした時に事業ドメインがすごく近いと感じました。障がいのある方の雇用のマーケット自体がまだ小さくて、一緒にやっていくことで形を作っていこうという話をしたことを覚えています。
守屋:その後は新卒採用の合同説明会などのイベントを共同で運営するといったことを一緒に取り組んでいきました。
未来の業務を切り出す
業務切り出しはどうやって行うのですか?
守屋: 業務の切り出しにおいて方向性はいろいろとありますが、その中でも「未来の業務の切り出し」が大事だと考えています。
業務切り出しというと難しいイメージがあると思いますが、現場のキーパーソンの方に「人手と時間があればどんなことをしてもらいたいですか?」と聞くと、たくさんの業務が上がってきます。今ある業務をどうにか切り出そうとするのではなく、未来に目を向けることでできる業務も見えてくることが多くあります。
それと、はじめて障がい者雇用をする企業は、どうしても「どんな業務ならできるかわからない」ということがネックになります。そこでマイナビパートナーズ紹介の事例をお伝えすると「そんなこともできるんですね」と驚かれることがよくあります。
窪様:加えて、新卒採用になると精神障害や発達障害の雇用が進まないという現状もあります。何か新卒ということで業務に関する考えが新卒総合職の業務内容でないといけない、という風に固定化される部分があって、障がいのある学生の社会への入り口を広げるためにも業務切り出しや職域開拓ということが非常に重要だと感じています。
【業務切り出しの考え方】
- 今ある業務ではなく、「人手と時間があればどんなことをしてもらいたいか」など未来に目を向けて考える
- 他社の事例などから「どんな業務ならできるか」をまず知る
- 新卒採用でも「新卒総合職の業務内容でないといけない」といった固定観念を捨てる
業務切り出しは土台作りが大事
業務切り出しのポイントを教えてください
窪様:業務切り出しのプロセスとしては、まずは土台作りから始めていきます。未来の業務を切り出すにしても、最低限の障がいの知識は必要になります。そこで、研修をして障がいのある方の特性や人物像を見ていくことが大事といった内容を説明することで、任せる業務のイメージが浮かんできます。
そのイメージをヒアリングしていって、具体的に任せる業務の全体像を整理していきます。単に業務内容を提案するだけではなく、そういった土台作りの面から進めていくことが障がいのある方を戦力として雇用する上で重要だと考えています。
土台作りをしていった結果、新しく業務を作らなくても「今あるこの業務ができるのでは」となることもあります。どうしても障がいのある方と聞くと「きっとこの業務は出来ないのだろう」と最初からあきらめてしまう方も多いので、その不安を取り除いていくことも業務切り出しのポイントの一部だと考えています。
【業務切り出しのプロセス】
- 障がいのある方の特性や人物像など最低限の知識を身につける
- 具体的に任せる業務の全体像を整理する
- 今ある業務を任せられる場合は、障がいのある方が抱えがちな「きっと出来ないだろう」という不安を払拭する
それぞれの得意な面を活かした連携
マイナビパートナーズ紹介と組んだことでの相乗効果を教えてください
守屋:エンカレッジさんと組む上では、それぞれの得意な面を活かして連携しています。営業的な面ではマイナビパートナーズ紹介が窓口となっています。日々、さまざまな企業様と関わる中で、障がい者雇用に関して課題感がある企業とエンカレッジさんを繋げる役割を担っているのです。
そして、業務切り出しの話になったときは、マイナビパートナーズ紹介の事例を伝えるようにしています。マイナビパートナーズ紹介では、障がいのある方にこういった業務を担当してもらっています、という具体的な事例を紹介し、業務を考える際のたたき台にしてもらっています。その上で、エンカレッジさんからも他社事例も合わせて伝えることで、より企業がイメージしやすくなっていると感じます。
窪様:マイナビパートナーズ紹介さんは企業のニーズを的確に把握しているので、連携する中でとても心強いです。障がい者雇用って、企業の中で「今だ」という時期があるんですね。それまではなかなか進んでいなかったのが、業務再編のタイミングなどで一気に動くということがよくあるのです。そういった時期を逃さないことも成功のポイントなのですが、マイナビパートナーズ紹介さんはそのことを感覚的に把握しているので、組んでいて非常に助かっています。
守屋:そうですね、現状では障がい者雇用に関する優先順位はベースとして低い傾向があります。でも、それが突然高まる瞬間というものがあるのです。法定雇用率の上昇や株主からの指摘など企業によってさまざまな理由はあると思いますが、そのタイミングを掴むことが大事です。
それとともに、その企業の力学を理解することがポイントだと思います。例えば、企業ごとに道筋の作り方も異なっているので、それを把握することも大事です。まずは研修から始めるという企業であればダイバーシティ研修を切り口にするなど、企業に寄り添った方法だと受け入れてもらいやすくなります。
キャリアを作っていくことが大事
具体的な業務切り出しの方法を教えてください
窪様:業務切り出しには足し算型と引き算型の方法があると思っています。足し算型というのは、色々な部署や担当からできそうな業務を集めてきて一つの大きな業務にする、とう考え方です。
それに対して引き算型というのは大きな業務から特性上、実施が難しい業務を引いていくという考え方です。例えば総務という大きな業務の中から、障がい特性上難しい電話対応の業務だけをやらないといったパターンがあります。
ただ、業務の切り出しは一度行ったら終わりではなく、出来る業務を増やしていくステップをどう作っていくかということも大事になります。業務を切り出すというと細分化されたものを担当してもらう、というイメージがあると思います。
しかし、障がいのある方が業務に慣れたり成長したりする中で、任せる業務を増やしていけます。それは他の新入社員の育成と同じだと思います。業務切り出しを入口にしてどんどん職域開拓をしていくという意識が大切です。
守屋:そうですね、職域開拓をする上で業務の切り出しが一つのフローとしてあると捉えていくことが大事だと思います。
窪様:職域開拓の具体的な例でいうと、メンタル不調の方はストレスがかかると体調を崩してしまうことがあるので、まずは確実にできることからスタートするというケースがあります。そして体調が安定してきたら、単純な入力作業から分析作業、その次はコメントを入れる作業、さらにそこから自身で効率化する作業もしてもらうといった形のようにステップを作っていきます。
そういったステップに関しては採用担当というより、現場の担当の方に理解してもらえると話がスムーズに進むと思います。
ただ、企業は障がい者雇用に何か不安があって相談に来るので、それを「こうやってください」と伝えるだけでは解決できません。企業なりの考えや不安があって相談していただいているので、寄り添った上で「どうやったらできる」という話をしていくことが大切です。
人数もいきなり10人採用するというのは難しいので、まずは1人採用してもらってパイロットケースを作っていくということもあります。
【業務切り出しの方法例】
- メンタル不調の方は心身にストレスをかけないためにまず確実にできることからスタートする
- 業務範囲を広げるステップに関して現場の担当の方に理解してもらう
- まず1人など少人数から採用してパイロットケースを作る
障がいのある方を社会に送り出していく
今度の展望を教えてください
窪様:エンカレッジの今後の展望としては、障がいのある学生や求職者と企業、それに学生を支援する大学の教職員、その三者をうまく繋いでいくことを目指しています。
あまり注目されていない点なのですが、教職員が学生をサポートするスキルを身につけていくことが重要だと考えています。教職員の支援としては、障がいについての研修や勉強会の開催、教職員が参加できるSNSを運営しその中で交流ができるような仕組み作りなどをしています。
守屋:企業の中に道を創っていく、職域を開拓していくということをエンカレッジさんと一緒にやっていきたいと考えています。現在では日本の企業の半数が法定雇用率未達成なので、この活動は10年20年では終わらないと思います。そこを開拓し続けていきたいというのが一つですね。
それとともに、若者インターンシップも含めた若者支援も積極的に取り組んでいきたいですね。そこに関しては職域開拓もそうですし、それ以外の領域でもベストパートナーとしてエンカレッジさんと一緒にやっていきたいと思っています。
障がいのある方をどう1人の人としてとらえてもらうか
この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします
窪様:障がいの有無の前に1人の人としてとらえてもらえたらと思っています。企業さんにインターンシップをお願いするときに「障がいのある方が行きます」というと、難しいと言われることが多くあります。しかし、「コミュニケーションを苦手に感じている若者の活躍の場を作って欲しい」というと受け入れてもらえることもあります。
障がいがあると聞くとハードルが高くなりますが、1人の人としてその方の活躍の場を作るという意識で捉えてもらえたらと思います。障がい関係なくラベル付けをせずに、ニュートラルに見ていただくことが、色々な人が活躍する社会につながっていくと思いますし、私たちもそこをサポートしていきたいと考えています。
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