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障害者手帳の1級って?判断基準や受けられる支援・サービスを紹介!

目次

障害者手帳の1級は、障害の程度が最も重度の状態です。

しかし、「障害者手帳の1級とは、どのような状態なのだろうか?」「障害者手帳の1級で受けられるサポートは?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、障害者手帳の1級について気になる方のために、判断基準や受けられる支援やサービスを紹介します。

障害者手帳はなぜ必要?


障害者手帳とは、一定以上の障がいがある方に交付される手帳です。

また、障害者手帳を取得すると、経済的・物理的な負担に対するサポートを受けられるようになります。

障害者手帳の取得は任意のため、必ず取得しなければならないものではありません。また、取得する手帳の種別や等級によって、受けられる福祉サービスや支援が異なる場合もあります。

しかし、障害者手帳を取得することによって、支援の対象者であることを証明できるため、福祉サービスや支援を受ける場合の手続きがスムーズに進められます。

一方で、一定以上の障がいがあっても、障害者手帳の交付を受けていない場合は、受けられるサービスや支援の対象外となってしまう可能性があります。

そもそも障害者手帳とは、障がいのある方の自立や社会参加を促し、各種サービスや支援を受けやすくするためのものです。

特別な理由がなければ、日常生活の選択肢を広げるツールとして交付を受けておくと良いでしょう。

障害者手帳の種類と等級一覧

障害者手帳は、障がいの内容に応じて「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳(地域によって呼び方が異なります)」の3種類があります。

次の表のように、障害者手帳は、種類ごとに基準となる法律や、対象疾患、等級が異なります。

【障害者手帳の種類】

障害者手帳の種類 身体障害者手帳 精神障害者保健福祉手帳 療育手帳
基準となる法律 身体障害者福祉法 精神保健福祉法 特になし(厚生労働省のガイドラインに基づき都道府県で決めている)
対象疾患 ●視覚障害
●聴覚障害平衡機能障害
●音声・言語・そしゃく機能障害
●上肢・下肢・体幹障害
●心臓障害
●じん臓障害
●呼吸器機能障害
●ぼうこう又は小腸機能障害
●肝臓機能障害
●免疫(ヒト免疫不全)機能障害
●統合失調症
●気分(感情)障害
●非定型精神病
●てんかん
●中毒精神病
●器質性精神障害(高次脳機能障害含む)
●発達障害
●その他の精神疾患
●知的障害
等級 1級〜6級 1級〜3級 A(重度)、B(重度以外の中程度)
(自治体によってはさらに細分化されることもある)
受けられる支援・サービス ●障がい者雇用枠での就労
●障がい者向け就労サービスの利用
●医療費の負担減
●税金の控除
●公共交通機関などの割引
●その他割引などのサービス
●補装具購入費用の助成や支給


注意点として、受けられる支援やサービス内容(割引内容)は、障害者手帳の種類の違いや等級によって異なります。

また、よく誤解されているのが「障害者手帳の等級」と「障害年金の等級」です。

障害者手帳の等級と障害年金の等級は全く別のものです。

基準となる制度が異なるため、身体障害者手帳1級の人が、障害年金の1級を受給できるわけではないのです。

障害者手帳1級の判断基準

障害者手帳の最重度の等級は、いずれも1級です(知的障害ではAに該当)。

それでは、障害者手帳1級とはどのような程度(状態)なのか、その判断基準を手帳の種類別に確認しましょう。

等級 判断基準
身体障害者手帳1級 【肢体不自由】
・上肢
1.両上肢の機能を全廃したもの
2.両上肢を手関節以上で欠くもの     

・下肢
1.両下肢の機能を全廃したもの
2.両下肢を大腿の2分の1以上で欠 くもの

・体幹
体幹の機能障害 により坐っていることができないもの

【視覚障害】
両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、きょう正視力について測ったものをいう。以下同じ。)の和が0.01以下のもの

【内部障害】
●心臓機能障害/じん臓機能障害/呼吸器機能障害/ぼうこう又は直腸の機能障害/小腸機能障害により、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
●ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害/肝臓機能障害により、日常生活がほとんど不可能なもの
※「聴覚障害」は2級、「平衡機能障害」と「音声機能・言語機能又はそしゃく機能の障害」は3級が最重度です。

精神障害者保健福祉手帳1級 精神障害であって、他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの
療育手帳重度(1度やAなど) ・18歳以上の場合
知能指数(IQ)がおおむね19以下で、生活全般にわたり常時個別的な援助が必要
※療育手帳の判定基準等の運用方法は各自治体により異なります。

障害者手帳の申請方法


次に、障害者手帳の申請方法について紹介します。

申請の流れは、手帳の種類によって異なることに注意が必要です。

身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の申請方法

身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳を申請する流れは以下の通りです。

【身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の申請方法】

  1. 指定医へ診断書(意見書)の作成を依頼
  2. 市町村の窓口に申請書と診断書等を提出
  3. 判定(認定)を受ける
  4. 都道府県知事が交付

身体障害者手帳の申請

身体障害者手帳の申請には、都道府県知事(指定都市市長または中核市市長含む)が指定する医師の診断書と意見書が必要です。

申請すると、都道府県が障害認定をおこない、都道府県知事により身体障害者手帳が交付されます。

なお、身体障害者手帳に有効期間はありません。障がいの程度に変化がなければ、再認定は必要なく、交付された手帳は半永久的に有効です。

精神障害者保健福祉手帳の申請

精神障害者保健福祉手帳の申請には、精神保健指定医(又は、精神科を標榜する医師)による診断書または、精神障害による障害年金を受給している場合は、障害年金証書の写しのどちらか一方が必要です。

申請すると、各都道府県(政令指定都市含む)に設置されている「精神保健福祉センター」において審査・判定が行われ、都道府県知事により精神障害者保健福祉手帳が交付されます。

精神障害者保健福祉手帳の認定有効期間は2年間です。有効期間中に精神障害の状態に変化があったときには、有効期間内でも等級の変更申請をすることが可能です。

身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳は、申請するときに診断書が必要な点や主な流れは同様です。

異なる点として、精神障害者保健福祉手帳の場合は、初診日から6ヵ月以上経過しなければ、申請ができないため注意してください。

療育手帳の申請方法

療育手帳の申請は以下の流れで行います。

【療育手帳の申請方法】

  • 市町村の窓口に相談。申請書を提出
  • 判定のための面接、知能検査、発達検査などを受ける。
  • 都道府県知事が交付

療育手帳の交付を受けるには、まず市町村の窓口に申請書と写真を提出します。申請に医師の診断書は必要ありません。

申請後、面接や知能検査、発達検査などを経て、知的障がいがあると判定されると、都道府県知事が療育手帳を交付します。

なお、知的障害の判定は、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で行います。

障害者手帳を取得するメリット


障害者手帳を取得すると、手厚いサービスや、金銭面での負担を軽減できる制度の対象となります。

とくに、障害者手帳1級の方は、障がいの程度が最も重度のため、最大限のサポートが受けられます。

障害者手帳を取得するメリットには、以下のことが挙げられます。

【障害者手帳を取得するメリット】

  • 就労サービスを受けることができる
  • 障がい者雇用枠を利用できる
  • 医療費の割引を受けることができる
  • 教育費の割引を受けることができる
  • 税金の控除を受けることができる
  • 公共交通機関や施設が割引になる

就労サービスを受けることができる

障がいのある方が就労するために必要な知識や技能に関する支援を受けられます。

障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、4つのサービスがあります。

【就労系障害福祉サービス】

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 就労定着支援

なお、障害福祉サービスの利用には、障害者手帳は必須ではありません。

事前にお住まいの市町村に「障害福祉サービス受給者証」の申請をして、取得する必要があります。

就労移行支援

一般企業への就職を目指す場合に、就労に必要な能力や知識を得るための訓練が受けられます。

例えば、社会人としてのマナーや挨拶、身なりなど実際に就職した場合に必要となる基本的なスキルを身につける支援や、就職後のイメージを掴むための職場実習など。

就職した後も、その職場へ定着できるよう継続的なフォローが受けられます。

ハローワークや障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどと連携した支援体制が整えられています。

就労継続支援A型

一般企業への就職が困難な方に対して、就労や生産活動の機会、就労に必要な能力や知識の向上を目的とした支援が受けられます。

雇用契約を結ぶため、利用者は労働基準法の適用を受けます。そのため、支払われる賃金はその地域の最低賃金が保証されます。

就労継続支援B型

就労継続支援B型の対象は、一般企業への就職が難しく、雇用契約に基づく就労が困難な方です。

就労もしたいが、日中の居場所として安心して過ごせる場所が欲しいという方が利用できます。

雇用契約は結ばず、就労の機会を通じて生産活動に関する知識や能力を身につけることができます。

就労定着支援

就労定着支援は、就労移行支援などのサービスを利用して、一般企業に就職した方が対象のサービスです。

就職にともなって起きるさまざまな問題に対する支援が行われます。

例えば、就職したことにより、生活習慣が崩れてしまい、結果的に就労継続が困難となってしまうケースなど。

そういった問題を防ぐために、就職後の生活に関する支援を受けられるのが就労定着支援です。

障がい者雇用枠を利用できる

就職する時に「障がい者雇用枠」に応募できることもメリットです。

障がい者雇用枠とは、障がい者を対象とした採用枠で企業が雇用を行なうことです。

障がい者雇用枠は、障害者手帳が必要となるため、応募者数自体が少なくなる傾向があります。

そのため、障がいのある方の採用に積極的な企業に雇用される可能性が高くなります。

障がい者雇用枠で働くか迷っている方は、転職エージェントに相談すると良いでしょう。

障がいのある方に特化した転職エージェントでは、キャリアアドバイザーによる面談やカウンセリングを通して、希望や特性に合った仕事の紹介や、就職後のサポートなどの支援が受けられます。

医療費の割引を受けることができる

障害者手帳を持っていると申請によって「自立支援医療制度」の対象となり、医療費の割引を受けることができます。

自立支援医療制度とは、障がいの除去・軽減の効果が期待できる医療について、医療費の自己負担額を軽減する制度です。精神通院医療、更生医療、育成医療の3つがあります。

そのほか、とくに障がいが重い方の医療費の自己負担分を軽減する心身障害者医療助成制度」も受けられる場合があります。

この制度は自治体が独自に実施する制度のため、自治体によって名称や対象者、支援の内容が異なります。詳しくは、自治体の担当窓口へ確認が必要です。

教育費の割引を受けることができる

教育費の割引も受けることができます。

保護者の方の負担が軽くなるよう「特別支援教育就学奨励費」が支給され、学用品費や学校給食費、修学旅行費、通学費など教育費の一部の援助が受けられます。

対象は、特別支援学校や通級指導教室などに通う児童生徒です。

税金の控除を受けることができる

費税や住民税の控除、相続税の障害者控除など税制上の優遇や、自動車税や自動車取得税の減免などが受けられます。

なお、障害者控除には「特別障害者控除」と「障害者控除」の2種類があり、等級により控除額が異なります。

公共交通機関や施設が割引になる

鉄道やバス、タクシー、飛行機などの公共交通機関の料金や、美術館、博物館などの入館料が割引になります。

そのほかにも、NHK放送受信料の減免や携帯電話の基本料金、テーマパークやカラオケなどの料金の割引も受けられる可能性があります。

障害者手帳を取得するデメリットはない!


障害者手帳は、障がいのある方を支えるとともに、より社会参加をしやすくするための大切なツールです。

そのため、障害者手帳を取得するデメリットは、ほとんどないと言えます。

唯一デメリットがあるとすれば、手帳の申請や更新、転居時の届出など手続きが必要なことに煩わしさを感じる場合があることでしょう。

ただ、デメリットがないと言っても、障害者手帳の取得をためらう方がいることは事実です。

その理由として「給料が減るのでは?」「生命保険に入れないのでは?」といった誤解があるからです。

障害者手帳を取得していることを理由に給料が減ることはないため、心配いりません。

障がいがあることを理由に、障がいがない人と差別することは法律で禁止されています。

ただし、時短勤務や業務内容の制限を理由として、給料が少なくなるケースはあります。

また、生命保険の加入についても、障害者手帳の有無は関係ありません。加入審査の主な基準は「健康状態」です。加入時に「既往歴」として告知する必要があるだけです。

まとめ

障害者手帳の1級は、障がいの程度が最も重度のため、経済的・物理的な負担に対するサポートを最大限に受けられます。

とくに、障がい者雇用枠での就職活動は、一般雇用枠よりも就職しやすくなるといったメリットがあります。

障がい者雇用枠で働くか迷っている方は、転職エージェントに相談することも手段の一つです。自分に合った働き方を探していくうえで検討してみると良いでしょう。

マイナビパートナーズ紹介

【本記事監修者】
佐々木規夫様                   

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

 

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