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発達障害の方がコミュニケーションを苦手に感じる理由は?対処法とあわせて解説

目次

発達障害がある方の中には「職場で会話が続かない」「話がかみ合わない」などの経験があり、コミュニケーションを苦手としている人もいるのではないでしょうか。

コミュニケーションを苦手と感じる理由には、ご自分の発達障害の特性が関係しているかもしれません。

そこで、本記事では、発達障害の特性からコミュニケーションを苦手とする理由を解説するとともに、対処法についても紹介します。

職場でうまくコミュニケーションを取る方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

発達障害とコミュニケーション障害は違う


発達障害のある方は、他者とのコミュニケーションが苦手な傾向があります。

また「コミュニケーション障害」という疾患がありますが、発達障害によってコミュニケーションが苦手であることとコミュニケーション障害とはまったく異なるものです。

日本では、発達障害は「発達障害支援法第2条」によって、以下のように定義されています。

【発達障害の定義】

「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障がいであって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」

※引用元:発達障害支援法第2条

いわゆる「コミュ障」とは?

では、いわゆる「コミュ障」と「コミュニケーション障害」に違いはあるのでしょうか。

近年は俗語として「コミュ障」という言葉が一般化しています。

コミュ障とは、医学的な疾患名ではなく、人見知りで他者とのコミュニケーションに苦手意識がある人や、人との会話やコミュニケーションにコンプレックスを抱いている人などを示したりすることが多いようです。

ただし、その人の性格的な特徴でもありますが、環境変化や成長とともに改善する方が多いのが特徴です。

一方で、コミュニケーション障害は、アメリカ精神医学会のDSM-5によるコミュニケーションの定義で「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」に分類されています。

例えば「流暢に話すことが難しい」「言葉をはっきりと発声することが難しい」などの症状はがコミュニケーション障害の一つとされています。

そのため、言葉は似ていますが「コミュ障」と「コミュニケーション障害」はまったく異なるものになります。

発達障害でコミュニケーションを苦手に感じる理由


発達障害は人によってさまざまな特性があり、全員がコミュニケーションを苦手とするわけではありません。発達障害は特性によって、大きく3つに分類されます。

種類 主な特性
ASD(自閉スペクトラム症) 対人関係の困難や興味関心の偏りなどの特徴がある
ADHD(注意欠如・多動症) 「不注意・衝動性・多動性」の特性が見られる
LD/SLD(学習障害/限局性学習症) 特定の能力の習得に困難さを抱える

※参照元:厚生労働省:発達障害の特性

発達障害の種類の中でも、特にASD(自閉スペクトラム症)とLD/SLD(学習障害/限局性学習症)の方は、障がいの特性からコミュニケーションを苦手に感じる人が少なくありません。

その理由は後述しますが、すべての発達障害の人がコミュニケーションを苦手としているのではなく、障がいの特性からコミュニケーションを苦手とする理由を考える必要があります。

ASDの場合

ASD(自閉スペクトラム症)には、対人関係やコミュニケーション力、想像力に苦手さを持つという特性がみられます。

ASDの方が、コミュニケーションを苦手に感じる理由は以下の通りです。

【考えられる理由】

  • 相手の気持ちや空気が読み取りづらい
  • 曖昧な表現を理解しづらい
  • 人間関係を理解しづらい

相手の気持ちやその場の空気を読み取りづらい傾向があるため、会話が噛み合わず、一方的に話してしまうことがあります。

曖昧な表現である比喩や例えも理解しづらく、言葉通りに受け取って勘違いを起こしてしまうことも。

反対に、思ったことをストレートに伝え、相手に不快感を与えてしまうケースもあります。

また、職場での上司と部下などの関係のような、対人関係(社会関係)を理解しづらい傾向があるため、相手に合わせて言葉や話し方を使い分けることが難しい場合があります。

このような特性から、ASDのある方は、人との関わり方やその場の状況を読み取って、良好な人間関係を構築することが困難に感じることがあります。

LD/SLDの場合

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の方の場合は、「読む」「書く」「計算する」「聞く」といった特定の能力の習得に困難さを抱えるという特性がみられます。

LD/SLDの方が、コミュニケーションに苦手さを感じる理由には以下の2つがあります。

【考えられる理由】

  • 情報伝達の方法が合致しない
  • 苦手とする能力を必要とされる場面で困難さが目立つ

LD/SLDの方は、メールなどでの文字情報による伝達方法では、内容を速やかに理解することが難しいことがあります。

さらに、自分が苦手とする能力を必要とされる場面では、求められたことへの対応が難しかったり、時間がかかったりするなど困難さが目立ちます。

そのため、相手に「スムーズなコミュニケーションがとりにくい」と誤解されてしまうのです。

LD/SLDは、相手に気づかれにくい障がいであることが特徴であり、コミュニケーションを苦手に感じさせる原因になっていると言えます。

ADHDの場合

ADHD(注意欠如・多動症)には、ものごとに集中できない「不注意」や、思いついた行動を唐突に行う「衝動性」、落ち着きがなくじっとしていることが苦手な「多動性」が組み合わさった特性が見られます。

ADHDの方で、コミュニケーションを苦手に感じる理由は、以下のような理由があります。

【考えられる理由】

  • 衝動的に行動してしまう
  • 人の話を集中して聞けない
  • しゃべりだすと止まらない

計画性がなく衝動的に行動する傾向があるため、チームワークを乱してしまうことがあります。また、人と話をしていても、気が逸れてしまい集中して話を聞くことができない場合も。

相手の話をさえぎって話し始めてしまったり、しゃべりだすと止まらなくなったりするケースもあります。

ADHDの方は、不注意・多動性・衝動性という3つの特性から、周囲とペースを合わせて会話や行動することに困難さを感じる場合があります。

発達障害の方のコミュニケーション能力は訓練できるか


では、発達障害ある方のコミュニケーション能力は訓練できるのでしょうか。

ご自分の発達障害の特性からコミュニケーションを苦手とする理由を知った上で、できることがあるとすれば、以下のような方法があります。

  • 自分の話を相手にわかりやすく伝える
  • 相手の伝えたいことを最後までしっかりと聞く
  • 話を聞くときは、相手が話しやすい態度をとる

相手と話をする時には、相手がわかりやすい内容であるか、あるいは回答しやすい内容であるかを考えながら伝えると良いでしょう。

反対に、相手の話を聞く時には、相手の話に興味を持って最後までしっかりと聞くようにしましょう。

相手が話しやすいように視線を向けて、うなずいたり、あいづちを打ったりすることでコミュニケーション能力は訓練できるでしょう。

ただし、自分の努力だけで解決しようとするのではなく、周囲に発達障害であることを伝えて、特性を理解してもらうことも重要です。

理解を得ることで、状況に応じた配慮や支援をしてもらいやすくなります。

発達障害の方の職場でのコミュニケーションの取り方


発達障害の方がコミュニケーションの取り方で困りごとを感じやすいのが職場です。

職場の人と上手にコミュニケーションを図るには、上司や同僚などに自身の特性を理解してもらうことが大切です。

ここでは、職場で良好なコミュニケーションを取るための具体的な取り組みを紹介します。

【取り組みの例】

  • 具体的な指示をもらえるようにお願いする
  • 会社のマニュアルを自分専用に作り変える
  • 写真、録音など得意な方法で記録をとる

上記の取り組みは、一例です。発達障害は人によって特性が違うため、ご自身の特性をよく理解した上で、それぞれに合った方法を考えていく必要があります。

具体的な指示をもらえるようにお願いする

曖昧な表現を理解しづらい特性のあるASDの方は、言葉の真意を理解することが難しいため、誤解が生じやすくなります。

そのため「適当に・だいたいで」「あれ・それ」「早めに・多めに」などの曖昧な言葉は避けて、具体的な指示をもらえるようにお願いしましょう。

例えば「Aは12時までに提出」「Bのやり方はCさんに聞いて」「会議は10分早く13時から始めます」など。

このように具体的な時間や業務内容などの指示をもらうと、受け取り方に対する誤解がなくなり、相手とのコミュニケーションが取りやすくなります。

会社のマニュアルを自分専用に作り変える

会社のマニュアルを自分専用に作り変えることも、職場で良好なコミュニケーションを取るために必要な取り組みのひとつです。

曖昧な表現が理解しづらい特性のあるASDの方や、文章や数字の計算、記号が理解しにくい特性のあるLD/SLDの方の場合には、会社のマニュアルの内容がわかりにくかったり、意図を汲み取ることが難しかったりするケースがあります。

その対処法として、具体的な表現にマニュアルを書き変えたり、文字ではなく音声のマニュアルを作ったりするなどの方法があります。

自分が理解しやすいようにマニュアルを作り変えると、同じ業務を行う人とのコミュニケーションが図れ、仕事もスムーズに進めることができます。

ただし、注意点として、自分専用のマニュアルは、元のマニュアル作成者に内容に問題がないか確認してもらうことが大切です。

写真・録音など得意な方法で記録をとる

「読む」「書く」「聞く」といった特定の能力の習得に困難さを抱えるLD/SLDの方の場合は、苦手とする情報伝達の方法で説明された場合、記録をとるのに困る場合があります。

そのような時には、写真・録音など自分が得意とする方法で記録をとれば、問題なく仕事をこなすことができます。

例えば、ボイスレコーダーを使った音声で記録して後で確認する、カメラで撮影して記録するなどの対処法があります。PCやタブレットを使用して記録するのも良いでしょう。

ただし、録音や写真撮影をする場合は、情報漏洩などの問題を指摘される場合もあるため、責任者に確認が必要です。

発達障害の方が活用できる支援機関・サービス


発達障害の特性を周囲に理解してもらえない場合には、支援機関・サービスを活用する方法もあります。

【発達障害の方が活用できる支援機関・サービス】

  • 発達障害者支援センター
  • 精神保健福祉センター
  • 就労移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 転職エージェント

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害についての専門的な知識を持ったスタッフに相談できる機関です。

都道府県や指定都市、または社会福祉法人などが運営しており、令和5年4月現在で全国に89ヶ所あります。障害者手帳がなくても利用可能です。

【発達障害者支援センターで受けられる支援内容】

相談支援 発達障害のある方の日々の生活に関わる様々な相談を受け付けています。必要に応じて、関係機関や支援機関などを紹介してもらえます。
発達支援 発達障害に関する相談に対して、アドバイスや発達検査が受けられます。
就労支援 ハローワーク、地域障害者職業センターなどの就労支援機関と連携した支援を受けられます。就労に関する相談や必要な情報提供も行われています。


発達障害者支援センターの特徴は、発達障害のある方に向けて日常生活と社会生活の総合的な支援が受けられることです。

また、医療、福祉、労働といった関係機関と連携した支援体制が整えられています。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、精神障害や発達障害などに関する専門的な相談ができる機関です。本人だけでなく、家族や周囲の人などからの相談も受け付けています。

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法にもとづき各都道府県と政令指定都市に設置されています。(全国69ヶ所に設置)

【精神保健福祉センターで受けられる支援内容】

精神保健福祉相談 こころの健康に関する困りごとの相談を受け付けているほか、医療機関や支援機関についての情報提供も行われています。
精神科 デイケア 精神疾患の再発防止や社会復帰などを目的とした精神科デイケアなどのプログラムを利用できます。発達障害のある方に向けた専門プログラム(ASAP)を行っているセンターもあります。


精神保健福祉センターの特徴は、精神障害に関する相談に応じてもらえることと、専門的なプログラムが受けられることです。

医師や精神保健福祉士、臨床心理士などの専門家が在籍し、精神障がいのある方の自立と社会参加の促進のための支援を提供しています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所では、求職から就職、就職後の定着支援までの一連のサポートを受けられます。

運営主体は、障がい者向け転職支援を行う民間企業や、障がい者支援NPO法人などさまざまで、全国に約3,000か所の事業所が存在しています。

利用できるのは、一般就労または在宅での就労・起業を希望する原則18歳から65歳未満の方。障害者手帳を持っていなくても利用可能です。

ただし、通所するには「障害福祉サービス受給者証」が必要です。

【就労移行支援事業所で受けられる支援内容】

  • 一般就労に必要な基礎的知識・技能習得に関する支援
  • ハローワークや事業者と連携した就職活動のサポート
  • 就職後の定着支援 

職業訓練や職場実習などの実務を交えながら、社会性やビジネスマナーを実践的に身につけられるのが特徴です。

また、就職後の定着支援として、仕事内容や職場の人間関係に関する支援も受けられます。発達障害のある方が職場でのコミュニケーションの取り方に悩んだ時には、相談に応じてもらえます。

注意点として、事業所独自のネットワークで就職につながるケースもありますが、基本的に就労移行支援事業所では、求人紹介は行われていません。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターでは、障がい者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスを実施しています。

支援の対象は、障がいのある方だけでなく事業主も含まれます。障害者手帳を所持していない方でも利用可能です。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構によって運営され、各都道府県に1か所以上設置されています。

【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】

  • 職業評価
  • 職業準備支援
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
  • リワーク支援
  • 事業者へのサポート

障がい者職業カウンセラーやジョブコーチなどの専門職員が在籍し、専門性の高い支援が受けられることが特徴です。

ハローワークと連携して、仕事に関する相談や働き続けるためのサポートが受けられます。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う機関です。

2023年4月1日時点で全国に337か所設置されています。利用時には、原則として 障害者手帳が必要ですが、手帳を保持していない方も利用可能です。

【障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容】

  • 就業に関する相談
  • 特性を踏まえた雇用管理に関する助言
  • 関係機関との連絡調整
  • 日常生活に関する助言

障害者就業・生活支援センターでは、就職相談に加えて、生活面も含めたトータルの支援をうけられることが特徴です。

ハローワークや地域障害者職業センター、事業主などと連携をとりながら一体的な支援が行われています。

ハローワーク

全国各地にあるハローワーク(職業安定所)では、就職相談や就活セミナー、求人紹介などの支援が行われています。

ハローワークには障がいのある方向けの専門相談窓口が設置されており、専門知識のあるスタッフによるきめ細かな支援が受けられます。

障害者手帳を保持していない方も利用可能ですが、障がい者雇用枠の求人を紹介してもらう場合は、障害者手帳が必要です。

【ハローワークで受けられる支援内容】

  • 求人情報の提供
  • 就職相談
  • 就職活動の支援
  • 就職後の定着支援

ハローワークでは、障がいのある求職者向けの支援が受けられることが特徴です。

地域の障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センターなど支援機関と連携して、就職から職場定着まで一貫した支援が行われています。

転職エージェント

転職エージェントは、転職を希望する方に対して、多くの求人情報の中から条件や希望に合う企業を紹介してくれる民間の人材紹介サービスです。

【転職エージェントで受けられるサービス】

  • カウンセリング
  • 求人紹介
  • 書類添削・面接対策
  • 企業とのやり取りの代行
  • 就職後のフォロー

中でも「障がい者雇用特化型」の転職エージェントでは、障がい者雇用の専門知識を持つキャリアアドバイザーが在籍し、求人探しから入社後までの総合的なサポートを行っています。

専門のアドバイザーから、障がいの特性に合う職業の提案や求人紹介、就業後のサポートを受けられることがメリットです。

「一人での就職活動に不安がある」と悩む方は、利用を検討してみるとよいでしょう。
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まとめ

発達障害のある方のコミュニケーションについての工夫をまとめました。発達障害のある方が「コミュニケーションが苦手」と感じる場合は、自分自身の特性を知った上で、ちょっとした工夫を行うと、良好なコミュニケーションが取れるようになります。

また、就職活動に不安を感じている場合には、発達障害の方が活用できる支援機関や転職エージェントのサービスを活用するのもひとつの手段です。

この記事を参考に、各支援機関や転職エージェントの特徴や利用条件をおさえて上手に活用しましょう。マイナビパートナーズ紹介

 

【本記事監修者】
佐々木規夫様                    

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

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