2024年05月28日
下肢障害の方が働きやすい仕事・職場選びのポイント|働くうえでの工夫や就職支援サービスを紹介!

目次
- 下肢障害とは
- 下肢障害の方が仕事をするうえで困ること
- 下肢障害の方が働くうえで工夫していること
- 下肢障害の方が働きやすい職場選びのポイント
- 下肢障害の方の面接で伝えるべき内容
- 下肢障害がある方が活用できる就労サービス
- まとめ
下肢障害の方は、一人ひとり異なるため、働きやすい仕事環境を探すことが重要です。
しかし、いざ転職活動を始めるとなると「働きやすい職場選びはどのようにしたらいいの?」と心配になりますよね。
今回は、下肢障害の方が働きやすい仕事や職場選びのポイントや働くうえでの工夫を解説します。
就職支援サービスも紹介しているため、仕事探しに困っている方は参考にしてみてください。
下肢障害とは
下肢障害とは身体障害の一つです。身体障害には、視覚障害や聴覚障害、内部障害、肢体不自由などの種類があり、下肢障害は肢体不自由に含まれます。
したがって車いすや歩行器、義足などの補装具を使用している方が多い傾向にあり、人によって移動の方法や要する時間は多様です。
下肢とは股から足までの部分をさし、下肢障害は足のどの部分から欠損しているか、どれくらい機能が失われているかで1~7級の等級に区分されています。
下肢障害の等級
下肢障害は、身体障害者福祉法で等級が定められています。
足のどの部分から欠損しているのか、機能がどの程度失われているのかによって、最重度の1級から軽度の7級までの等級に区分されています。
身体障害者手帳が交付される対象は、1級から6級までの等級に区分されている方です。等級の詳しい判断基準は以下の通りです。
【下肢障害の等級】
等級 | 判断基準 | 身体障害者手帳対象 |
1級 | (1)両下肢の機能を全廃したもの (2)両下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの |
○ |
2級 | (1)両下肢の機能を全廃したもの (2)両下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの |
○ |
3級 | (1)両下肢をシッパ一関節以上で欠くもの (2)一下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの (3)一下肢の機能を全廃したもの |
○ |
4級 | (1)両下肢のすべての指を欠くもの (2)両下肢のすべての指の機能を全廃したもの (3)一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの (4)一下肢の機能の著しい障害 (5)一下肢の股関節又は膝関節の機能を全廃したもの (6)一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短いもの |
○ |
5級 | (1)一下肢の股関節又は膝関節の機能の著しい障害 (2)一下肢の足関節の機能を全廃したもの (3)一下肢が健側に比して5センチメートル以上又は健側の長さの15分の1以上短いもの |
○ |
6級 | (1)一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの (2)一下肢の足関節の機能の著しい障害 |
○ |
7級 | (1)両下肢のすべての指の機能の著しい障害 (2)一下肢の機能の軽度の障害 (3)一下肢の股関節、膝関節又は足関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障害 (4)一下肢のすべての指を欠くもの (5)一下肢のすべての指の機能を全廃したもの (6)一下肢が健側に比して3センチメートル以上又は健側の長さの20分の1以上短いもの |
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下肢障害の方が仕事をするうえで困ること
下肢障害の方が仕事をするうえで、どのようなことに困るのでしょうか。
以下のような困りごとがあるようです。
【下肢障害の方が仕事をするうえで困ること】
- 公共交通機関が不便で定刻出勤が難しいことがある
- ドアの開け閉めが難しいことがある
- トイレが不便なケースがある
- 高いところや床にあるものが取りにくいことがある
- 移動に時間がかかる場合がある
抱える悩みは人それぞれであるため、自分はどのようなことに困っているのか、どのような場面で強くストレスを感じるのかなどを把握しておくことが大切です。
下肢障害の方が働くうえで工夫していること
下肢障害の方が働くうえで工夫していることは、以下の通りです。
足に負担がかからないように移動回数を調整し、自分のペースを保つことで働きやすくなる場合があります。
【下肢障害の方が働くうえで工夫していること】
- 用事をまとめてこなし歩く回数を減らす
- 計画立てて効率よく仕事をしてロスを減らす
- 自分のペースで焦らず行動する
また歩行障害がある方は、バリアフリーなどの設備が整っているかどうかを確認している傾向もあります。
下肢障害の方が働きやすい職場選びのポイント
下肢障害の方が働きやすい職場選びのポイントを紹介します。
【下肢障害の方が働きやすい職場選びのポイント】
- 下肢障害の方が続けやすい仕事内容であるか
- バリアフリーなどの設備が整っているか
- 時短勤務や在宅勤務など柔軟な働き方ができるか
- キャリア・技能向上への配慮があるかどうか
- 困った時に相談できる窓口があるかどうか
- 障がい者雇用枠での就職も検討する
どのポイントも働きやすくするために重要です。
下肢障害の方が続けやすい仕事内容であるか
下肢障害の方にとって、続けやすい仕事内容とはどのようなものでしょうか。
厚生労働省が行った平成30年度の調査によると、下肢障害を含む肢体障害のある方は身体障害の方全体の42.0%を占めていました。
また、身体障害の方全体の就職状況では事務職だけではなく、技術職やサービス業で働いている方も多くいます。
参考までに、身体障害の方全体の就職状況は以下の通りです。
■身体障害の方全体の就職状況(平成30年度)
- 事務的職業(32.7%)
- 生産工程の職業(20.4%)
- 専門的・技術的職業(13.4%)
- サービスの職業(10.3%)
- 販売の職業(9.6%)
参考:厚生労働省|職業安定局障害者雇用対策課地域就労支援室「平成30年度障害者雇用実態調査結果」
下肢障害があることにより職業選択が限定されるわけではありません。個人のスキルや資質、適性を判断してさまざまな仕事ができます。
バリアフリーなどの設備が整っているか
下肢障害の方にとって、バリアフリーに対応した設備が整っている環境が重要です。
設備の例は、以下の通りです。
- 車椅子が通りやすい道幅になっている(90cm以上〜)
- スロープやエレベーターがある
- 机の高さ調整ができる
- トイレが使いやすいように改造されている
- 歩行障害の方にとっても歩行しやすくなっている
また、車椅子を利用して移動する際は体力を使うため、移動の際に負担が強くならないかを確認するとよいでしょう。
時短勤務や在宅勤務など柔軟な働き方ができるか
勤務時間や場所に応じて、柔軟な働き方ができるか確認が必要です。下肢障害がある方は、自動車通勤が多い傾向にありますが、通勤や帰宅時の交通事情などによって負担がかかる場合もあります。
こうしたケースを考慮して、時差出勤、時短勤務、あるいはリモート勤務など柔軟な働き方を検討してくれる会社を選ぶとよいでしょう。柔軟な働き方を選択することで、パフォーマンスがより発揮しやすくなります。
キャリア・技能向上への配慮があるかどうか
職場のキャリアアップへの配慮があるかを確認することが大切です。
人材育成に力を入れている職場は、社員のキャリアやスキルアップを支援するための制度やプログラムを用意していることが多い傾向にあります。
障がいがあるからといってキャリアや技能向上の機会が限られることなく、場合によっては代替手段なども考慮されているような会社は、障がい者への理解も深い会社と言えるでしょう。
困った時に相談できる窓口があるかどうか
悩みを相談できる窓口があるかどうかも職場選びにおいて重要なポイントです。メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業は増加傾向にあり、従業員が50人以上の職場(事業場)では産業医に相談が可能です。
このように職場内に相談窓口や専門家が配置されていれば、働くうえでの安心材料になるでしょう。
また、障がい者向けの転職エージェントをはじめとした支援サービスや機関では、就職後も相談や面談などアフターフォローとして利用できます。
障がい者雇用枠での就職も検討する
障がい者雇用制度とは、企業や自治体などが障がいのある方の特性に合わせた働き方ができるように雇用することです。
「障害者雇用促進法」によって定められており、企業や自治体は障がいのある方を決まった割合で雇用すること、合理的配慮を提供することなどが義務付けられています。
【合理的配慮とは】 “「障がいのある方から、社会の中になるバリアを取り除くために何らかの対応を必要とする意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することを事業者に求められる。」” |
障がい雇用枠で働くためには「障害者手帳」を所持していることが必要です。
また、下肢障害で「障害者手帳」の対象になるのは、1級〜6級まであると覚えておきましょう。
下肢障害の方の面接で伝えるべき内容
下肢障害の方が面接を受けるうえで、伝えるべき内容は以下の通りです。
【下肢障害の方の面接のコツ】
- 自身の障がいについての情報を明確に伝える
- 苦手なことや得意なことを伝える
- 健康面などで配慮をお願いしたいことを伝える
面接では、障がいによって下肢がどのような動きがしづらいのか、どのような作業が難しいのかを聞かれる傾向があります。
しかし、自分ができることやしたいこと、またどのようなサポートがあればより働きやすいか、どのような工夫をすれば苦手を克服できそうかなど、働くことへの意欲についてもしっかりアピールすることが重要です。
下肢障害がある方が活用できる就労サービス
下肢障害がある方が仕事を探す際に、抱えている悩みや不安を相談できるサービスが数多くあります。
【下肢障害者の方が活用できる就労サービス】
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワーク
- 転職エージェント
就労サービスごとに支援内容が異なるため、ご自身がどのようなサポートを受けたいかを検討しておくことが重要です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、全国に約3,000か所の事業所が存在しており、障がいのある人の求職から就職までの一連の過程をサポートする支援機関です。
サービスの対象は、一般就労を希望している65歳未満の障がいのある方です。働く技術の習得から面接対策などを支援しています。
就労するために必要なスキルを取得する機関であるため、求人紹介を行う場所ではないと覚えておきましょう。
【就労移行支援事業所で受けられる支援内容】
- 24か月(標準期間)の中で一般就労に必要なスキルを取得
- ご自身の障害特性の理解
- 就職後の定着支援
下肢障害の方にとって、仕事をするうえでご自身の障害とどのように向き合えばよいのか相談できる機関です。
地域障害者職業センター
地域障害者支援センターは、ハローワークと連携し、障害者雇用促進法に基づき各都道府県に設置されている支援機関です。
ハローワークといった他の支援機関や企業などと連携して、「職業リハビリテーション」を提供しています。
地域障害者支援センターは、各都道府県に設置されています。受けられる支援は以下の通りです。
【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】
- 職業準備支援
- 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
- 事業主に対する相談・援助
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障がいのある人の仕事をサポートする目的で全国に設置されています。
仕事と生活の一体的な支援を目的としており、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関と連携しながら支援している機関です。
障害者就業・生活支援センターで受けられるサービスは以下の通りです。
【障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容】
- 就業に関する相談
- 特性を踏まえた雇用管理に関する助言
- 関係機関との連絡調整
- 日常生活に関する助言
ハローワーク
ハローワークは正式名称「公共職業安定所」と呼ばれ、厚生労働省設置法に基づき各都道府県に設置されている行政機関です。
障がいのある方に向けた窓口が設けられていて、専門スタッフへの相談や職業指導、障がい者雇用枠への応募ができます。
ハローワークで受けられる支援は以下の通りです。
【ハローワークで受けられる支援内容】
- 職業相談や職業紹介
- 応募書類の作成サポートや面接準備
- 障がい者雇用枠への応募
- 職業訓練の紹介
転職エージェント
転職エージェントとは、求人検索サイトと異なり、担当者が面談や手続きを行うサービスを提供します。
障がいのある方向けのサービスを提供している企業もあり、キャリアアドバイザーが相談者の障がい特性、希望する条件などをうかがいながら、転職サポートを行います。
また、障がい者向けのエージェントを希望する場合は、障害者手帳が必要です。
転職エージェントサービスで受けられる支援内容は以下の通りです。
【転職エージェントで受けられる支援内容】
- キャリアアドバイザーによるカウンセリング
- 障がいや特性に応じたアドバイス
- 転職活動全般のサポート
- 書類添削・模擬面接などの採用試験対策
- 入社後のアフターフォロー
転職エージェントは、キャリアに関する相談だけではなく、障がいや特性に応じたアドバイスがもらえます。下肢障害の方にとって、安心して相談できるでしょう。
まとめ
今回は、下肢障害の方が働きやすい仕事・職場選びのポイントを紹介しました。
下肢障害と一口に言ってもさまざまな症状があり、必要な配慮には個人差があります。自分の症状や対処法を説明できるように準備をし、働く意欲をアピールすることで、ご自身の希望する就職につながるでしょう。
一人で準備や対策を行うのが難しいと感じた方は、下肢障害の方が活用できる支援機関や転職エージェントの利用を検討してみてください。
【本記事監修者】 佐々木規夫様 産業医科大学医学部医学科卒業。 |