2024年03月31日
障がい者雇用枠は給料が低い?|年収の相場と対策の事例を紹介します
目次
障がい者雇用枠での就職は「一般雇用枠より給料が少ないのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか?
本記事では、障がい者雇用枠で就職した場合のメリット・デメリットをはじめとして、障がい者雇用の給料が低いと言われる理由や障がい者雇用の平均賃金、給料が上がった事例などをご紹介します。
就職先の給料が平均賃金より低い場合でも、収入アップのための対策がとりやすくなります。
これから障がい者雇用枠で就職や転職を検討している方や、障がい者手帳を取得したばかりの方は、ぜひ参考にしてください。
障がい者雇用枠で働くとは?
障がい者雇用枠とは、企業などが障がい者を対象に雇用する採用枠のことです。
障がい者の雇用の促進などに関する法律では、企業などに対し、常時雇用する労働者数の一定の割合(法定雇用率)に相当する人数以上の障がい者を雇用することを義務付けています。民間企業における2024年度からの障がい者雇用率は2.5%となっています。
障がい者雇用枠で 働くためには条件があり、以下のいずれかを所有している必要があります。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳(愛の手帳)
また、障がいがある方が就職する場合には、主に以下の3つの選択肢があります。
- 障がいがあることを言わずに一般の雇用枠で働く
- 障がいがあることを伝えたうえで一般の雇用枠で働く
- 障がいがあることを伝えたうえで障がい者雇用枠で働く
ここでは、就職先に障がいがあることを伝えたうえで、障がい者雇用枠で働く場合のメリットとデメリットについて解説します。
障がい者雇用枠で働くメリット
障がい者雇用枠で働くメリットは、以下の通りです。
【障がい者雇用で働くメリット】
- 周りの人の理解が得られやすい
- 合理的配慮を受けられる
- 働きやすい環境が整いやすい
周りの人の理解が得られやすい
障がいのあることをオープンにして働くため、働く上で制限がある場合でも職場の理解や支援を得やすくなります。
例えば、フルタイムで働けない方でも、企業によっては短時間勤務が用意されていることから、自分に合った働き方を選択できることなどがあります。
障がい者雇用枠での求人は、企業側が受け入れる体制を整えたうえで募集しています。そのため、障がいの理解も得られやすく、周りの支援を得ながら安心して働けるメリットがあります。
合理的配慮を受けられる
障がい者雇用枠で働くメリットとして大きいのが「企業へ合理的な配慮を求めることができる」点です。
「障害者雇用促進法」では企業側は、求めに応じて障がいのある方が社会的な不利益を受けずに働けるよう、合理的な配慮を提供しなければなりません(合理的配慮)。
例えば、車いすを利用する方に向けて、高さを変えられる机を用意するなど、働きやすさを支援するような支援機器を導入することが該当します。他に、パニック障害の方に通勤ラッシュに配慮して出退勤時間を変更することなども合理的配慮にあたります。
働きやすい環境が整いやすい
障がい者雇用枠での就職では、自分の働きやすい環境が整いやすいこともメリットです。
障がい者雇用枠では、企業側と障がいについて話し合い、どのような仕事ができるか、職場環境の希望などを伝えてから働き始めます。
そのため、障がいに応じて得意なことを活かして働けたり、働く場所なども考慮してもらえたりするため、働きやすい環境が整いやすくなります。
障がい者雇用枠で働くデメリット
障がい者雇用枠で働くデメリットは、ほぼないと考えて良いでしょう。
例えば、「障害者手帳を取得すると給料が減額されるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、障がい者だからという理由で給料を低く設定することは「障害者雇用促進法」で禁止されていますのでご安心ください。
障がい者雇用の給料が低いと言われる理由
繰り返しになりますが、障がい者だからという理由で、給料や研修の機会、待遇、福利厚生などに差別を受けることは「障害者雇用促進法」で禁止されています。加えて、最低賃金についても、一般雇用と障がい者雇用は同額に設定されています。
それにもかかわらず、なぜ障がいのある方の平均賃金は安い傾向にあるのでしょうか。
障がい者雇用の給料が低いと言われる理由には、以下の3つがあります。
【障がい者雇用の給料が低いと言われる理由】
- 勤務時間を短縮している
- 非正規社員で雇用されている
- 最低賃金が減額される特例がある
勤務時間を短縮している
合理的配慮などにより、勤務時間を短縮している場合は、それに伴って月々受け取れる給料は低くなります。
これは、短時間勤務でできる仕事の内容や、1日の業務量の違いによるものであるため「障がい者雇用だから給料が低い」という理由ではありません。
非正規社員で雇用されている
- 身体障害者は52.5%
- 知的障害者は19.8%
- 精神障害者は25.5%
- 発達障害者は22.7%
参照元:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果 」
上記の通り、身体障がい者の約半数は正規雇用されていますが、知的障がい、精神障がい、発達障がいがある方の8割程度は非正規雇用であることがわかります。このことから、正規雇用で働く人が少ないことも障がい者雇用の給料が低いと言われる理由の一つと言えるでしょう。
最低賃金が減額される特例がある
我が国では、最低賃金法に基づいた賃金の最低限度が定められており、事業主はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとされています。
ただし、一部特例として都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金の減額が認められています。(減額特例措置と言います)
具体的には、以下の場合に最低賃金が減額される可能性があります。
【最低賃金が減額される場合】
- 精神または身体の障がいにより著しく労働能力が低い場合
- 試用期間中の場合
- 基礎的な技能や知識を習得させるための職業訓練を受けている方の場合
- 軽易な業務に従事している場合
- 断続的労働に従事している場合
上記はあくまで個別の労働能力や働く状況によるものであり、全ての方を対象としているのではありません。減額特例措置で認められた内容以外の場合は、一般雇用枠と同様の最低賃金で働きます。
障がい者雇用の平均賃金
以下は、障がい別にまとめた民間企業での障がい者雇用の賃金です。
週間勤務時間 | 身体障がい者 | 知的障がい者 | 発達障がい者 | 精神障がい者 |
通常(30時間~) | 248,000円 | 137,000円 | 164,000円 | 189,000円 |
20~30時間 | 86,000円 | 82,000円 | 76,000円 | 74,000円 |
~20時間 | 67,000円 | 51,000円 | 48,000円 | 51,000円 |
上記の通り、最も賃金が高いのは、身体障がい者の方です。前述した「障がい別の正規雇用者の割合」で身体障害の方の正規雇用率が最も高いことも一因と考えられます。
障がい者雇用枠で給料が上がった事例紹介
障がい者雇用枠で働く場合でも、給与アップやスキルアップの機会は公平に与えられています。ここでは障がい者雇用枠で給料が上がった事例を3つご紹介します。
ただし、以下はあくまでも一例であり、必ずしも給料がアップするわけではありません。
【障がい者雇用枠で給料が上がった事例】
- 正社員雇用を目指してキャリアアップした
- 資格を取得して資格手当がついた
- 好条件の会社へ転職した
正社員雇用を目指してキャリアアップした
多くの企業では、パートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用から、正社員へ雇用形態を変更できる「正社員登用制度」を設けています。
前述した通り、障がい者雇用の給料が低いと言われる理由のひとつに「非正規社員で雇用されている」ことがあげられます。
障がい者雇用枠での就職は、非正規社員からスタートすることが多いため、給料が低くなる傾向にあります。
そこで、この「正社員登用制度」を活用できると、給与アップとキャリアアップを目指すことが可能となります。
正社員に登用される基準は各企業によって異なります。たとえば、半年や1年などその企業で働いた期間が基準となる場合もあれば、業績を上げたなど人事的な評価や、筆記や面接などの登用試験を設けている場合もあります。
ただし企業によっては正社員登用制度自体がない場合もあります。「正社員登用制度」の有無は採用面接の時でも確認できますので、将来的なキャリアアップを目指す方は留意しておくようにしましょう。
資格を取得して資格手当がついた
資格を取得することで資格手当がつき、給与アップにつながることもあります。
会社で特別な資格がないと担当できない仕事がある場合は、資格取得によって専門的な業務が可能となるため、毎月の給与が上がる可能性があります。
また、資格試験への挑戦は、仕事に関わる技術や知識を高められるというメリットもあります。転職したいと考えた時にも、何か資格を持っている方が転職活動に有利に働くでしょう。
障がい者雇用で給与アップを目指すには、資格試験に挑戦してみるのも一つの手段と言えます。
好条件の会社へ転職した
条件の良い会社へ転職することで給料がアップした事例もあります。
給料を上げたいと思っていても、そもそも月収が低めの業界や昇給が少ない会社では、収入を増やしていくことは難しいでしょう。これは、一般雇用も同様です。
給料アップを目指すのであれば、好条件の会社へ転職も視野に入れてみましょう。
たとえば、給与水準の高い業種に転職するのもひとつの手段です。
国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の年間平均年収は441万円となっています。また、平均年収の高い業種トップ5は以下の通りです。
業種 | 平均年収 | |
1位 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 759万円 |
2位 | 金融・保険 | 631万円 |
3位 | 情報通信 | 622万円 |
4位 | 製造 | 519万円 |
5位 | 建設業 | 501万円 |
異業種への転職は、 前職とは異なる知識やスキルが必要となる場合もありますので、年収や条件だけを見て判断しないようにしましょう。
また、転職することで一からのスタートとなり給料が下がる可能性があることも知っておきましょう。
働きやすい職場探しは転職エージェントがおすすめ
障がいのある方が働きやすい職場を探すなら、転職エージェントがおすすめです。
転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが転職活動を全面的にサポートしてくれるサービスです。無料で利用できることがほとんどで、障がい者雇用枠の方が望ましいのか、一般雇用枠でチャレンジできるのかなどのアドバイスもしてもらえます。
また、求職者の方との面談やカウンセリングからその方に合った求人情報を提示してくれるだけでなく、転職活動を効率よく進めたい方や転職での不安、悩みを解消したい方、自分のキャリアを見つめなおしたい方など、さまざまな面でサポートしてくれます。
転職エージェントでは、以下のサービスが受けられます。
- キャリア相談:キャリアアドバイザーが相談者からこれまでの経験や、障がい特性、希望する条件などを聞き、整理していきます。
- 求人の紹介:キャリア相談をしたうえで、その人に合った求人の紹介を受けることができます。
- 応募書類添削・面接のアドバイス:応募する書類の添削支援や、面接時のアドバイスなどを行います。
- 面接や入社の日程調整の代行:面接の日時や、内定後の日程調整などの手続きの代行を行います。
入社後も定期的なフォローが受けられるため、新しい仕事や職場環境で不安や困りごとがあった場合でも、気軽に相談できることも魅力です。
このように、転職エージェントでは、障がいのある方が働きやすい仕事環境や自分に向いている企業で長く活躍するためのサポート体制が充実しています。
一人での就職活動は、企業とのコミュニケーションも取りづらく、入社後のリスクにも気づきにくいものです。しかし、転職エージェントを橋渡し役としてうまく使うことで、ご自分に向いている企業を探すことができるでしょう。
まとめ
障がい者だからという理由で給料を低く設定することは「障害者雇用促進法」で禁止されています。
しかし、障がい者雇用では時短勤務で働く方や、非正規雇用の方が多いことなどにより、一般雇用と比べると給料が低い傾向にあります。
障がい者雇用で高い給料の職場へ就職したい場合には、正社員での就職や資格の取得、好条件の会社への就職を目指すと良いでしょう。
これから就職活動を始める方で、自分1人では就職先を見つけることが難しいと感じる方は、転職エージェントの活用を検討してみましょう。
【本記事監修者】 佐々木規夫様 産業医科大学医学部医学科卒業。 |