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統合失調症の方で働いている人の割合や雇用状況|長く働き続けられる環境とは?

目次

統合失調症は100人に1人が発症するといわれており、珍しい病気ではありません。働くことで症状が悪化するのではないかなど、就職に不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、統合失調症の症状や業務上での悩み、職探しのポイントを解説していますので、どのように仕事に向き合うか検討できます。

利用できる就労サービスも解説していますので、就職を考えている統合失調症の方は、ぜひ参考にしてみてください。

統合失調症とは

統合失調症とは

統合失調症の発症の原因は、現在のところまだわかっていません。精神的なストレスや、人生の転機で起こる緊張などがきっかけで発症するのではないかとされています。

統合失調症は、精神障害の一つとされますが、精神障害には統合失調症のほかにも、次のような病気も該当します。

【精神障害の種類】

  • 統合失調症:心や考えがまとまりにくくなってしまう。症状のため気分・行動・人間関係に影響がでることがある
  • うつ病(気分障害):「気分が落ち込む」「何をしても楽しめない」といった精神症状と「眠れない」「食欲がない」などの身体症状が現れる
  • 双極性障害(躁うつ病):調子が高い躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返す
  • てんかん:突然意識を失うといった「てんかん発作」を繰り返し起こす

統合失調症の主な症状

統合失調症には、次の3つの症状がみられます。

症状 具体的な症例
陽性症状 幻覚・幻聴・妄想、思考や記憶の障がい など
陰性症状 喜怒哀楽の感情が乏しくなる、やる気や思考力の低下 など
認知機能障害 記憶力・集中力・判断力の低下 など

 

陽性症状は実際に存在しないものが見えたり聞こえたりする症状です。統合失調症の症状としてわかりやすく、薬が効きやすい特徴があります。

逆に、陰性症状は健康な状態ではあったものが失われる症状です。症状は目立たないですが薬が効きにくいため、治療が長引くことがあります。

認知機能障害は、注意や記憶、判断力などの物事を認知する能力の低下がみられます。

仕事をするうえで困っていること

上記に挙げた3種類の症状から、統合失調症の方が仕事をする上では次のような困りごとが見られます。

【統合失調症の方が仕事をするうえで困っていること】

  • 体調が安定しにくいことがある
  • 症状が強く出る日には、疲れを感じやすい日がある
  • 幻聴などが聞こえる日は、仕事に集中しにくいことがある
  • 陰性症状の影響で、意欲低下がみられることがある
  • 認知機能障害の影響により、仕事のパフォーマンスが低下することがある など

統合失調症は、人によって症状が異なります。そのため、困りごとの内容も千差万別です。「自分の困りごとはどういった内容か」「どのようなことにストレスを感じるか」などを知っておくことが、仕事をする上では非常に大切です。

統合失調症の方が仕事を長く続けるには、次に挙げるポイントにも気をつけておくとよいでしょう。

  • 薬をきちんと飲み続ける
  • 規則正しい生活を送る
  • 健康的な食事をする
  • 無理をしすぎない など

統合失調症は精神障害者保健福祉手帳の対象

統合失調症の方は「精神障害者保健福祉手帳」の交付対象です。障がいの程度によって等級が決められており、数字が若いほど程度が重くなります。

等級 判断基準
1級 日常生活を送るのが困難な状態
2級 1級より症状は軽いが、日常生活に著しく制限を受けている状態
3級 2級より症状は軽いが、日常生活や社会生活に制限がある状態

参照元:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳」

また、等級の違いによって受けられる福祉サービスの範囲や補助金などに違いがあります。

【受けられるサービスの一例】
● 自動車税・軽自動車税・自動車取得税の軽減(1級のみ)
● 駐車禁止規制からの除外措置(1級のみ)
● 贈与税の非課税(1級は6,000万円まで、2・3級は3,000万円まで)
● 生活保護の障害者加算(1・2級のみ) など

参照元:東京都福祉保健局「精神障害者保健福祉手帳」

統合失調症で働いている人の割合・雇用状況

統合失調症で働いている人の割合・雇用状況

平成30年の障害者雇用促進法の改正で、統合失調症を含む精神障がい者が雇用義務の対象になりました。その観点から、統合失調症の方がどのくらい働いているのか、割合や雇用状況を見ていきます。

統合失調症で働いている人の割合

令和4年6月時点で、雇用されている障がい者の数は613,958人で、前年対比2.7%の増加となっています。

そのうち精神障がい者は109,764.5人です。前年比で11.9%の増加となっており、とくに精神障がい者の雇用は増えていることが読み取れます。

また、平成30年の厚生労働省の資料には次のデータもあり、精神障がいのある方でも統合失調症の割合が多いことがわかります。

1位 統合失調症 31.2%
2位 躁うつ病 25.8%(気分障害うつ病)
3位 てんかん 4.7%
その他 17.2%
不明(精神障害者保健福祉手帳保持者に限る)21.1%

 
また、働いている方の精神障害者保健福祉手帳の等級は2級が46.9%と、労働者の約半分です。

なお、週20~30時間の労働者は0.5人で計算するケースがあるため、実際の雇用人数とは若干の差があります。

参照元:
・厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果
・厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果
・厚生労働省「障害者雇用率制度の概要

統合失調症を含む精神障がい者が働く業種

令和4年の雇用状況の結果より、精神障がい者が雇用されている業種は次のとおりです。

1位 医療福祉 20.0%
2位 製造業 18.3%
3位 卸売・小売 15.7%
4位 サービス業 14.3%
5位 情報通信業 7.2%

 
就職を探す場合は、このデータを参考にしてみてもよいでしょう。

・参照元:厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果

統合失調症を含む精神障がい者の労働時間

平成30年の調査では、週あたりの労働時間は次の表のとおりになっています。

労働時間 精神障がい者 身体障がい者 知的障がい者 発達障がい者
通常
(週30時間以上)
47.2% 79.8% 65.5% 59.8%
週20~30時間 39.7% 16.4% 31.4% 35.1%
週20時間未満 13.0% 3.4% 3.0% 5.1%

 

こちらの表から読み取れるとおり、精神障がい者の労働時間は、他の障がいのある方に比べて短くなっているのが特徴です。数字を見ると、統合失調症を含む精神障がい者への合理的配慮として、「短時間勤務等勤務時間の配慮」が多いことが読み取れます。

・参照元:厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

統合失調症の方が長く働きやすい職場環境とは

統合失調症の方が長く働きやすい職場環境とは

基本的に、統合失調症という理由で職種や業種が限定されることはありません。しかし、働きやすい職場環境のある職種や業種であれば、より長く続けることが可能となるでしょう。

【統合失調症の方が働きやすい職場環境】

  • 勤務形態や働き方が柔軟である
  • 困った時に相談できる窓口が設置されている
  • 障がいを理解する風土がある。

勤務形態や働き方が柔軟である

勤務形態や働き方に柔軟性のある職場であれば、長く働ける傾向が見られます。

統合失調症は長期にわたる治療が必要となる場合があるため、働き方に柔軟性があれば体調に合わせた生活のリズムを整えやすく、安定して働くことが可能です。

【柔軟な勤務形態や働き方の例】

  • フレックスタイムの導入
  • ラッシュアワーを避けた時差出勤
  • 時短勤務・在宅勤務の選択
  • 通院による休暇
  • 症状による出勤場所や業務内容の考慮
  • 体調による勤務中の休憩 など

なお、障がい者雇用枠を利用した就職や、特例子会社への就職であれば、比較的融通がきく傾向があります。

困った時に相談できる窓口がある

困ったときに相談できる窓口が設置されていれば、働く上で安心感を得られます。

例えば、仕事の負担が大きく職場でのストレスを強く感じている場合などに、いつでも相談できる窓口があるだけでも、状態の安定につなげられる可能性があります。

また、労働者が50名以上いる事業場であれば、産業医の選任が義務づけられており、健康上の不安面を相談することも可能です。

また、転職エージェントなどの障がい者向け就労支援などを利用して就職した場合、就職後も相談や面談などアフターフォローが利用できるものもあります。体調に異変の兆候が見られた際は、ぜひ積極的に利用してみましょう。

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障がいを理解する風土がある

障がいを理解する風土が企業内にあるかどうかも大切なポイントです。

就職面接時に自身の状況を説明していても、企業に障がいを理解する風土がなければ、合理的配慮を受けられず、仕事をする上で困難がが生じる可能性があります。

また、体調不良時の通院や症状の悪化時の業務への相談なども、周囲が障がいを理解を示してくれる環境にあるかによっては、受け入れが異なります。

障がいを理解する風土がない企業においては、もしかするとやる気の問題といった短絡的な解釈をされてしまうことがあるかもしれません。

就職時には、障がい者雇用への理解や職場の人の受け入れの状況なども確認するようにしましょう。

統合失調症の方が利用できる就労サービス

統合失調症の方が利用できる就労サービス

統合失調症の方の仕事探しでは、以下のサービスを利用している方が多く見られます。

  • 地域障害者職業センター
  • ハローワーク

上記以外にも、次の就労サービスがありますので、合わせて利用を検討してみるとよいでしょう。

  • 就労移行支援事業所
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 転職エージェント

地域障害者職業センター

「地域障害者職業センター」は「独立法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が手掛ける、専門的な職業リハビリテーションサービスを障がい者の方に向けて実施する事業です。

各都道府県にそれぞれ1~2つずつ設置されており、受けられる支援内容はおもに次のとおりです。

【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】

  • 職業相談・職業適性の評価・職業リハビリテーション計画の策定
  • 個別の課題に応じた職業準備支援
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)による個人の特性を踏まえた専門的な雇用支援
  • 休職している方が職場復帰できるための課題の整理・リワーク支援 など

地域障害者職業センターでは、障がい者の方個人の特性に合わせた、専門的な支援を幅広く受けられるのが特徴です。就職先の紹介や職業訓練は実施されておらず、就職や職場復帰を目指す方への職業相談がメインとなります。

精神障がいの方であれば、基本的に手帳の有無を問わず利用可能ですので、就業を目指す方は問い合わせしてみるとよいでしょう。

ハローワーク

「ハローワーク」は、厚生労働省が全国に設置している公共職業安定所で、令和4年4月現在、全国に544カ所設置されています。障がいについて専門的な知識を持つ担当者のいる専門窓口が設けられており、障害者手帳を持たない方でも窓口利用ができます。

【ハローワークで受けられる支援内容】

  • 職業相談・職業紹介
  • 障がい者の方向け求人の確保
  • 関係機関と連携した就職支援
  • 採用面接時の同行・採用後の継続的な支援
  • 発達障害者雇用トータルサポーター
  • ハロートレーニング
  • 職業リハビリセンター

ハローワークは、おもに就業に関する支援を取り扱っています。各種就労支援機関と連携しているため、相談内容に応じて適切な機関の紹介も受けられます。就職の際はまずハローワークを訪ねてみて、就労について相談してみるとよいでしょう。

転職エージェントができること

転職エージェントができること

仕事を探す方法の一つとして、転職エージェントの利用も検討してみましょう。

「転職エージェント」とは、求職者に個別に専門のキャリアアドバイザーがつき、就職相談から就職後のフォローまで、一貫したサポートで就職を支援するサービスです。

障がい者の方の就職を専門で取り扱う「障がい者転職特化型」の転職エージェントでは、障がい者雇用枠の紹介を受けることができます

【転職エージェントで受けられる支援内容】

  • カウンセリング・できることの棚卸し
  • 就職市場・業界情報の情報提供
  • 書類添削・模擬面接など試験の対策
  • 企業への応募・面接日程の調整
  • 転職後のアフターフォロー

統合失調症が原因で転職活動が不安と感じている方でも、自身の状況を細かく相談しながら、転職活動を最後まで進められます。

障がい者雇用枠や特例子会社の求人を取り扱う転職エージェントであれば、より希望に添った企業の紹介を受けられる可能性は高いでしょう。

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まとめ

統合失調症の症状はさまざまであるため、向いている職種や職業は個人によって違います。これまでのデータを見る限り、統合失調症に向いている職業の傾向がある程度わかるため、参考にしてみるのもよい方法です。

また、長く働く上では職場環境が非常に大切です。環境に恵まれている職場を探すには、各種就労サービスを利用するとよいでしょう。転職エージェントを利用すれば、最後までしっかりと相談を聞いてサポートしてもらえますので、利用を検討してみるのもおすすめです。

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【本記事監修者】
佐々木規夫様          

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

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マイナビパートナーズ紹介は、マイナビグループの特例子会社である株式会社マイナビパートナーズが手がける、障がい者に特化した求人紹介サービスです。

マイナビパートナーズは設立から4年で100名以上の障がい者を採用してきました。そのノウハウと経験から、障がい当事者には適職をご紹介し、採用企業には、障がい者が活躍できる環境づくりのサポートを行っています。

障がい者本人が思いもよらぬ能力を発揮し、成果を出すところを私たちは目の当たりにしてきました。ひとつの求人と出会い、働くことで輝いていく姿は、なにものにも替えがたいものです。マイナビパートナーズ紹介は、これからも障がい当事者と企業の橋渡しをすることで、社会に貢献していきます。

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