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働いていて障がいを負った場合に受けられる支援や働きやすい職場選びのポイントを紹介!

目次

企業に就職した後、医師から障がいがあるとの診断を受けた場合、勤務先の企業に申告すべきかどうか、あるいはどのような支援を受けられるかお悩みの方は多いのではないでしょうか。
また、障害者手帳の交付を受けた際に勤務先の企業に情報が伝わるのか、交付を受けることで何が変わるのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、働く過程で障がいを負った場合の働き方や、働きやすい職場の探し方についてご紹介します。

障がいを負った場合の選択肢

就業している方が何らかの要因で障がいを負った場合、障がいの程度や種類に応じて取れる選択肢は異なります。障がいが業務に直接影響しないものである場合は、引き続き同じように働いても問題ありません。
一方、業務への影響が大きいと考えられる場合は、障がい者雇用枠で働くという選択肢もあります。
勤務先の企業において障害をオープンにして配慮を受けられるようにしたり、障がい者雇用枠で募集を行っている企業へ転職したりするなど、障がい者雇用枠の活用方法はさまざまです。

これまで通り働く

前提として、障がいがあるとの診断を受けた、障害者手帳を取得したという事実を勤務先の企業に報告する義務はありません。
厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」によると、「労働者本人の意思に反して、障害者である旨の申告又は手帳の取得を強要してはいけません。」とあります。
企業への報告に関しては労働者本人の任意によるものであり、障がいの有無を公表せずに働くという選択肢を採ることも可能です。
ただし、障がいの有無を申告しない場合、企業による合理的配慮の対象とならないことには注意しなければなりません。以前と同程度の業務能力を維持するために合理的配慮を必要とする場合、障がいの診断内容、障害者手帳の取得状況を事業主に申告する必要が生じます。

これまでの会社で障がい者雇用枠で働く

障がいの有無、そしてその状況を企業に申告する場合には、障がい者として合理的配慮を受けることが可能です。厚生労働省が定める「障害者雇用率制度」によると、民間企業は従業員の2.3%以上の障がい者を雇用することが義務付けられています。
障がい者雇用枠への移行を検討する場合は、障がいの内容および各企業の水準に応じた作業内容の調整、部署異動などの措置について事業主と話し合う必要が生じます。厚生労働省の「合理的配慮指針」では、事業主は相談体制の整備、相談者のプライバシー保護に必要な措置の実施が求められています。
また、厚生労働省による「合理的配慮指針」では、すべての事業主は障がい者であることを理由として不利な取り扱いを行うことが禁止されており、労働者が能力を発揮しやすい職場環境の整備が義務付けられています。
合理的配慮の具体的な内容に関しては、障がいの程度やサポートを必要とする内容が人それぞれ異なるため、労働者と事業主の間で話し合いの場を設けることが推奨されているのです。

障がい者雇用枠で転職する

障がいの内容を企業へ申告している労働者は、障がいの内容および水準に応じた合理的配慮を求められます。
一方で、業種や職種によっては身体面、精神面などへの影響によって安定した就業が困難になるケースがあります。身体面、精神面などへの影響によって業務遂行が困難になった場合、障がい者雇用枠を利用して転職することも選択肢の一つです。
障がい者雇用枠の求人を探す際には、各都道府県が運営する就労移行支援機関又は障がい者採用専門の転職エージェントなどを利用する方法があります。

労働者向けの就労移行支援機関にはハローワーク、障がい者職業センター、就労移行支援事業所などがあり、雇用に関する相談や障がい者求人の申し込みなどが可能です。転職エージェントでは障がいの内容に合わせたキャリアカウンセリング、障がいに対して理解のある職場への応募、定着支援などのサポートを受けられます。

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障がい者雇用枠とは?


企業が実施する求人募集には、一般枠と障がい者雇用枠の2種類があります。
障がい者雇用枠とは、障害者手帳取得者を対象に、一般採用とは異なる採用基準を設けた雇用枠のことです。民間企業は、障がい者雇用率が法定雇用率を上回るように障がい者雇用を行うことが義務付けられています。
厚生労働省が定める障がい者雇用のルールでは民間企業の法定雇用率は2.3%です。また、従業員を43.5人以上雇用する企業は1人以上の障がいのある方を雇用することが義務付けられています。
障がい者雇用枠と一般枠が異なる点は、合理的配慮の受けやすさと採用条件の2つです。障がい者雇用枠では、障がいに配慮した職場環境の整備、労働者に対するサポート体制などがあらかじめ考慮されています。
また、一般雇用とは異なる採用基準で、障害者手帳取得者のみを対象とした求人であることも、一般枠と異なる点です。
障がい者雇用枠で採用された場合、定期的な面談や定着支援などのサポートが行われる場合もありますので、障がい特性などによる困りごとを相談しやすい環境が整っていることも特徴です。

合理的配慮とは?

障がい者を雇用する企業には、労働者が能力を有効に発揮できるよう合理的配慮を行うことが求められます。

就業にあたって合理的配慮を必要とする場合には、労働者から事業主に対して提案、話し合いを行うことが推奨されています。

合理的配慮の具体的な実施例は、以下の通りです。

  • 通院に合わせた勤務時間の調整
  • 聴覚保護を目的とした耳栓の着用
  • 拡大読書機や読み上げソフトなど支援機器の導入 など

参考として、内閣府が公表している「合理的配慮の提供等事例集」から合理的配慮の事例を一部引用してご紹介します。

  • コミュニケーションに関する研修の実施
  • 職務遂行に必要な支援者を職場に配置
  • 障がい特性に応じた業務マニュアルの作成
  • 時短勤務や在宅勤務などの導入

障がい者雇用枠の就労条件

障がい者雇用枠を利用して就労するためには、障害者手帳を所有していることが条件です。
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類すべてが障がい者雇用率制度の対象となっており、いずれかを所持している方は障がい者雇用枠の求人募集に応募できます。
かつては、身体障害、知的障害に該当する方のみが対象でしたが、平成30年4月1日からは法律の改正により精神障害がある方も障がい者雇用枠の対象に含まれるようになりました。

障がいのある方が利用できる5つの就労支援

就職を検討する過程で、障がい内容に関する困りごとや不安を相談できる就労移行支援機関は複数あります。
支援内容は機関によって異なりますが、生活習慣の改善やビジネスマナーの学習を行うケースの他、職業相談、求人案内の紹介を行うなど、さまざまな支援を受けることが可能です。

【障がいのある方が利用できる就業サービス】

  • 就職移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 転職エージェント

ここでは、障がい者雇用に関する相談・支援が受けられる機関の概要と、主な支援内容についてご紹介します。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は障害者総合支援法に基づいて運営されており、市町村が主体として提供するサービスです。
厚生労働省の「障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況」によると、令和元年における就労移行支援事業所は全国に3,399か所です。
【就労移行支援事業所で受けられる支援内容】

  • 一般就労への移行を目的とした作業や実習環境の提供
  • 就職後の職場定着支援

就労移行支援事業所では、ビジネスマナーの習得や求職活動のサポートなどの他、継続的に就労するための体調管理の方法や生活リズムの調整などのサービスを受けられます。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構が運営する就労移行支援機関。47都道府県に1か所~2か所ずつ、合計52か所の地域障害者職業センターが設置されています。

【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】

  • 障がいのある方に対する職業リハビリテーションサービス
  • ジョブコーチによる定着支援
  • 障がい内容に合わせたカリキュラムの提供

地域障害者職業センターは利用希望者に対する職業評価、職業相談を行い、目標達成に向けた支援カリキュラムを提供しているのが特徴です。利用登録は障害者手帳の有無にかかわらず可能ですが、支援制度を利用する上で障害者手帳が必要になる場合があります。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、職業生活における自立、安定を目的とした支援を実施する就労移行支援機関です。都道府県知事が指定した法人によって運営される施設であり、令和4年4月1日時点で全国に338か所設置されています。

【障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容】

  • 就業に関する相談支援
  • 日常生活の自己管理に関する助言

障害者就業・生活支援センターはほかの就労移行支援機関、事業主、医療機関などの関係機関と連携し、就業面および生活面における一体的な支援を実施しているのが特徴です。

ハローワーク

ハローワークは就業を希望する方の求職登録、職業紹介などを行う就労移行支援機関。都道府県労働局が運営する施設であり、令和4年4月1日時点で全国に544か所設置されています。

【ハローワークで受けられる支援内容】

  • 職業紹介および職業相談
  • トライアル雇用の活用
  • 雇用保険制度の活用

ハローワークでは一般枠の求人募集もありますが、障がい者専門窓口が別途設けられており、就職を希望する方の状況に合わせた職業相談・求人紹介などを受けられます。

また、模擬面接のガイダンスや、3ヵ月間のトライアル雇用などの就業支援を実施している点もハローワークの特徴です。

転職エージェント

転職エージェントは転職希望者に対して求人紹介、面談日程調整、定着支援などを行う人材紹介サービスです。障がい者雇用に特化した転職エージェントでは、障がい者求人の紹介、カウンセリングなどのサービスを受けられます。

【転職エージェントで受けられる支援内容】

  • 障がい特性の把握を目的としたカウンセリング
  • 応募書類の添削および面接対策
  • 入社後の定着支援

障がい者雇用に特化した転職エージェントは、障がい特性に応じた求人情報の紹介、対応できる業務内容や必要な配慮などの条件に応じた応募先を探せるのが特徴です。
定着支援を実施しているサービスでは、障がい内容に合わせた働き方、困りごとの解決などについてアドバイスを受けられる点が転職希望者にとってメリットだと言えるでしょう。
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障がいのある方が働きやすい職場選びのポイント

障がいの有無、内容を公表して働く場合、仕事の進め方や勤務形態などを労働者の裁量で調整できる職場を選ぶことで働きやすくなる場合があります。
参考として、相談窓口の設置、支援機器の導入および運用などの配慮を積極的に行う企業は障がい者雇用に対する理解、実績があると考えられるでしょう。
職種によっては継続的な就労がしづらくなるケースがありますが、障がい者雇用に対する理解、配慮のある職場に勤務することで、より幅広い職業、職種に対応しやすくなると考えられます。

自分のペースで仕事ができる

障がい内容に対する合理的配慮として職場環境を調整することで、能力を発揮しやすい状況で仕事を行えるというメリットが得られます。
例えば、集中力にバラつきがある特性の場合、必要に応じてこまめに休憩できる職場環境が必要だと考えられるでしょう。
このように合理的配慮として職場環境の調整を必要とする場合、障がい特性に準拠した勤務場所を調整できるか、または仕事の習熟度に応じて作業量を調整できるかなどの点を確認することで、能力を発揮しやすくなる可能性があります。

勤務形態が柔軟

時期によって体調が安定しない、あるいは定期的な通院を必要とするなどの事情があるケースでは、勤務形態を柔軟に調整できることが必要になる場合があります。
国が推進する働き方改革の一環として、リモートワークや時短勤務などの働き方を導入する企業は近年増加傾向です。
リモートワークの導入によって集中力が増した、仕事の満足度が上がったという情報もあり、厚生労働省のポータルサイトでは働き方改革を推進する施策として紹介されています。

困った時に相談できる窓口がある

仕事や対人関係などの困りごとを相談する方法として相談窓口を利用することは、離職率の改善につながる対策の一つです。
厚生労働省の「令和2年労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合は61.4%であり、平成30年の前回調査より2.2%増加しています。
また、常勤従業員が50人以上勤務する事業場では、産業医の選任が義務付けられています。産業医は労働安全衛生法に基づいて選任され、労働者の健康管理、健康相談などを主な職務とする医師のことです。
常勤従業員が50人以上勤務する事業場に勤めている場合、働きながら健康を損なわないよう産業医に相談することも選択肢の一つです。
加えて、定着支援を実施している転職エージェントや就労移行支援機関などを利用する場合、就職後も定期的な相談や面談などのアフターフォローを利用できるケースもあります。

支援機器が導入されている

障がいのある方の支援を行う企業では、就労支援機器として拡大読書器、音声認識ソフトウェア、電動車いすなどの貸し出しに対応している場合があります。
目的は、障がいの分類や業務内容に応じた支援機器を貸し出すことで、業務に従事しやすい職場環境を構築すること。例えば、拡大読書器は、書類や画像などを拡大したり、文字のコントラストを高くしたりする機能がある機器です。
就労支援機器の導入実績がある企業の場合、障がい者雇用に対する理解度が高く、障がいのある方が能力を発揮しやすい職場環境の構築に取り組んでいると考えられるでしょう。
また、仕事を行う際に就労支援機器を必要とする場合には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から就労支援機器の貸し出しを受ける方法があります。
貸し出しを受けるためには事業主から支援機構に対して申請書を提出する必要があるため、就労支援機器の利用を検討する際には事業主に対して提案を行うことも選択肢の一つです。

まとめ

就業する方が障がいを負った場合、障がいの内容や業務内容との兼ね合いによって適切な対応は異なってきます。所属する企業で引き続き勤務する際には、障がいを公表せずに働く方法、あるいは公表して合理的配慮を相談する方法を選ぶことが可能です。
障がいを負ったことでそれまでの業務を遂行することが困難になった場合には、障がい者雇用枠で募集を行う企業に転職することも選択肢の一つです。仕事に関する困りごとに関しては、就労移行支援機関や転職エージェントに相談することで職場環境の改善、障がい者求人の紹介などが可能な場合がありますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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【本記事監修者】
佐々木規夫様    

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

 

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マイナビパートナーズ紹介は、マイナビグループの特例子会社である株式会社マイナビパートナーズが手がける、障がい者に特化した求人紹介サービスです。

マイナビパートナーズは設立から4年で100名以上の障がい者を採用してきました。そのノウハウと経験から、障がい当事者には適職をご紹介し、採用企業には、障がい者が活躍できる環境づくりのサポートを行っています。

障がい者本人が思いもよらぬ能力を発揮し、成果を出すところを私たちは目の当たりにしてきました。ひとつの求人と出会い、働くことで輝いていく姿は、なにものにも替えがたいものです。マイナビパートナーズ紹介は、これからも障がい当事者と企業の橋渡しをすることで、社会に貢献していきます。

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