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聴覚障害の方が就職の悩みや不安を相談できるサービス・支援先|職場選びのポイントも紹介!

目次

聴覚障害のある方が仕事を探す際には、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。昨今、障がいのある方と共に働く動きが社会的にも加速していますが、まだまだ就職や転職に悩みを抱える方は多くいらっしゃるでしょう。

この記事では、聴覚障害のある方やそのご家族などが知っておきたい、働きやすい職場選びのポイントや活用できる就業支援についてご紹介します。

聴覚障害とは

聴覚障害とは、音を認識する器官になんらかの問題が発生し、会話や周囲の音をきくことが難しくなっている状態です。全く聞こえない場合、補聴器を使うことである程度聞こえる場合、補聴器なしでも会話が聞き取れる場合など症状には個人差があります。

発声や発語に困難を抱える人であれば、場合によって音声以外のコミュニケーションを使うことが必要になるでしょう。先天的なものなのか、後天的に聴力に支障が生じたのかによっても、症状や必要な配慮は変わります。

聴覚障害の種類

聴覚障害には、音が聴こえる程度によって以下3つの定義があります。

【聴覚障害の種類】

  • ろう:音としての言葉を覚える前に聴力を失った場合。筆談手話を用いてコミュニケーションをとっている人が多い傾向にあります。
  • 難聴:聴力が残っている場合。補聴器を使えば会話ができる場合から、小さな音しか認識することができない場合まで多岐にわたります。
  • 中途失聴:音としての言葉を覚えたあとに聴力を失った場合。補聴器などの補助を受け、音声を用いてコミュニケーションをとっている人もいます。

聴覚障害の等級

聴覚障害では聴力レベルによって身体障害者障害程度等級が定められており、認定基準は身体障害者福祉法に基づきます。6級の認定基準である聴力レベルが70デシベル以上の人は高度難聴であり、WHOの規定では補聴器の常時使用、手話・読話の習得を必要とする水準です。

■聴覚障害の等級

等級 判断基準
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介(じかい)に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介(じかい)に接しなければ話声(わせい)語を理解し得ないもの)
両耳による普通話声(わせい)の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
6級 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)
一側耳(そくじ)の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳(そくじ)の聴力レベルが50デシベル以上のもの

引用元:目黒区「身体障害者障害程度等級(視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害)」

聴覚障害のある方が仕事中に困っていること

聴覚障害がある人が就業するにあたり、抱えている悩みや不安として以下のようなことが挙げられます。

【聴覚障害の方が仕事中に困っていること】

  • 複数人での会話が聞き取りづらい、または困難である
  • 話の早さについていけないことがある
  • 相手にうまく伝わらないことがある
  • 手話環境がなく、筆談やチャット対応が十分でないことがある

聴覚障害の特性によって悩みや不安を覚える出来事は人それぞれです。そのため、ご自身がどのような点で困っているのか、どういったことでストレスを感じるのかなどを知ることが大切だと言えるでしょう。自分自身の状態を知ることが、働きやすい職場や、やりたい仕事を見つけるための大きなヒントになります。

聴覚障害のある方が職場で工夫していること

聴覚障害のある方が仕事中の困難に直面した際には、どのような対策ができるのでしょうか。聴覚障害のある人が、職場で難しい問題に直面した際に工夫していることの例をご紹介します。

【聴覚障害の方が職場で工夫していること】

  • 基本的なコミュニケーションは筆談やメール・チャットでしている
  • 補聴器を使用している
  • 小さいホワイトボードやメモ帳を持ち歩くようにしている
  • 相手の言ったことを復唱して間違いないか確認している
  • 聞き取れなかった時は聞き直す
  • 音声変換アプリなどを活用している
  • 手話通訳や必要なICT機器の導入を相談する

聴覚障害のある方が働きやすい職場選びのポイント

対人の接客業など、聴覚障がいのある人が働いているケースが少ない、あるいは働く際に苦労する業種があることは事実です。一方、ご自身の適性に合った職種や環境を理解することで、継続的に働ける職場を見つけやすくなる可能性があるでしょう。

ここでは、聴覚障がいのある方が仕事を探す際に知っていると役立つポイントをご紹介します。

【聴覚障害の方が働きやすい職場選びのポイント】

  • メールやチャットでのコミュニケーションが主体の職場障がいに対して理解があるか
  • 困った時に相談できる窓口・人がいるか

メールやチャットでのコミュニケーションが主体の職場

コミュニケーションの手段は、音声を使うことだけではありません。チャットや筆談など、音を使わないコミュニケーションで業務が可能な職種は、聴覚障害がある人にとって働きやすいかもしれません。また、パソコン作業を中心とする業務は、コロナ禍による外出自粛の影響もあり、在宅勤務が可能となっているケースがあります。

音声によるコミュニケーションが少ない職種の例は、以下の通りです。

【聴覚障害の方が働きやすい職種の一例】

  • 管理部門や営業事務などの事務系
  • 在庫管理や配送手配などの軽作業系
  • システム開発やウェブデザインなどのエンジニア系

障がいに対して理解があるか

聴覚障害だけに限らず、障がいに対して理解がある会社かどうかは、安心して働くうえで非常に大切なポイントだと言えるでしょう。会社選びをする際は、合理的配慮を受け入れてもらえるか確認することをおすすめします。

例えば、聴覚障害のある方は、支援機器の導入をしてもらえるかなどの確認をすることが大切でしょう。代表的な支援機器としては、電話でのコミュニケーションをサポートする電話関連機器や、会議室などで役に立つ会議用拡聴器、筆談をサポートする筆談支援機器、音声を文字としてパソコン画面に出力する音声認識ソフトウェアなどがあります。

また、手話勉強会やろう文化の理解を促進している会社も一部あります。最後に、在宅勤務や時短勤務など、多様な働き方に対応しているかどうかも確認しておきましょう。働く人のさまざまな事情に配慮し、多様な働き方に対応している職場であれば、聴覚障害に限らず働きやすい傾向にあります。

困った時に相談できる窓口・人がいるか

近年、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業は増加傾向にあります。例えば、会社内にカウンセラーなどの相談窓口を設置している企業であれば、聴覚障害をはじめさまざまな障がいのある方にとって安心感に繋がるでしょう。仕事中に直面する困難は必ずしも一人で解決できるものではありません。どのようなケースであっても職場内に気兼ねなく相談できる人がいることは大切です。

また、従業員が50名以上の事業場は産業医を選任することが義務付けられています。どのようなサポート体制が整っているか、確認してみてください。

聴覚障害のある方が活用できる就労サービス

聴覚障害の人が仕事を探すにあたって、抱えている悩みや不安を相談できるサービスは数多くあります。障害者手帳の有無にかかわらず利用できるサービスもあるため、相談を検討してみてはいかがでしょうか。

【聴覚障害の方が活用できる就業支援】

  • 就労移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 人材紹介サービス

就労移行支援事業所

就労支援とは、一般就労を希望している65歳未満の障がいのある方に向いている仕事を見つけること、あるいは技術の習得などを支援すること。就労移行支援事業所は、全国に3,000を超える数の事業所が存在し、さまざまな支援を受けることが可能です。

【就労移行支援事業所で受けられる支援内容】

  • 就職を目指すためのトレーニング
  • 就職活動支援
  • 就職後の定着支援

就労移行支援事業所のメリットは、仕事のスキルだけではなく、自身の困っている点や仕事をするうえでの工夫などについてもサポートが受けられる点です。

就労移行支援事業所のサービスを利用するためには、障害福祉サービス受給者証が必要です。障害者手帳を所持していない方でも、医師の診断書等により障害福祉サービス受給者証が発行されるケースもあります。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障がいのある方に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設。障害者手帳を所持していなくても利用でき、全国47都道府県に、令和4年4月1日時点で全国338箇所設置されています。

【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】

  • 職業評価
  • 職業準備支援
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
  • 精神障害者総合雇用支援
  • 事業主に対する相談・援助
  • 地域における職業リハビリテーションのネットワークの醸成
  • 地域の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する助言・援助などの実施

地域障害者職業センターは、専門的な支援を提供することを目的としているのが特徴です。実践的な職業のスキルを得られることが魅力だと言えるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障がいのある方の就業サポートを目的に、全国に設置されている施設です。

障害者就業・生活支援センターは、仕事と生活の一体的な支援を行っている点が特徴。雇用、保健、福祉、教育等の関係機関と連携を行っているため、手厚いサポートを受けられます。原則として障害者手帳が必要となりますが、所持していない場合でも利用は可能です。

【障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容】

  • 就業に関する相談支援
  • 特性を踏まえた雇用管理に関する助言
  • 関係機関との連絡調整
  • 日常生活・地域生活に関する助言
  • 関係機関との連絡調整

ハローワーク

ハローワークは、全国に設置されており、障がいのある方の就職活動のサポートを行っています。障害について専門的な知識を持つ職員・相談員が在籍しており、仕事に関する情報の提供や就職に関する相談など、きめ細かい支援を受けることが可能です。

【ハローワークで受けられる支援内容】

  • 求職活動を全面的にバックアップ
  • 求人情報を提供
  • 求人票の条件を確認
  • 応募書類の作成や面接に向けた準備への支援
  • 就職のための各種支援セミナーを実施
  • スキルアップのための職業訓練(ハロートレーニング)を案内
  • 応募する求人事業所に紹介

求職活動の進め方、求人情報の入手方法や検索の方法、応募書類の添削指導など、仕事の希望や適性に合った仕事探しを支援している点がハローワークの特徴です。

転職エージェントサービス

障がい者向けの転職エージェントでは、カウンセリングによる職務適性の分析、障がい特性に応じた合理的配慮が受けられる求人紹介などのサービスを受けることが可能。障がい者向けの転職エージェントによる求人紹介サービス利用に際しては、障害者手帳が必要です。

障がい者雇用を専門とする転職エージェントでは、障がい内容に対する理解・配慮がある求人紹介を複数取り扱っており、仕事が続きやすい職場探しのサポートを受けられるのが特徴。採用が決まった後の定着支援として、勤務先との情報交換や労働者への相談対応などを実施しているところも複数存在します。

【人材紹介サービスで受けられる支援内容】

  • キャリアに関するヒアリング
  • 面接・選考試験のアドバイス
  • 条件にマッチした求人の紹介
  • 面接の日程調整
  • 応募書類の添削
  • 内定時の条件確認
  • 障がい者雇用枠に関する説明
  • 障がいに応じたさまざまなアドバイス
  • 内定企業と配慮事項の確認
  • 入社後のサポート

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まとめ

  • 今回は、聴覚障害のある人の就職について詳しくご紹介しました。聴覚障害と一口に言っても、症状はさまざまです。そのため、ご自身の症状を理解し、適切な職場環境を探すことが大切だと言えるでしょう。聴覚障害のある方向けの就労移行支援機関や転職エージェントサービスに相談することで、よりご自身に合った職場が見つかる可能性があります。ぜひ利用可能な機関を整理し、相談を検討してみてはいかがでしょうか。

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【本記事監修者】
佐々木規夫様       

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

 

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