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てんかんのある方が仕事を探すときに知っておきたいポイント|支援サービスや支援機関も紹介!

目次

「てんかんがあるので転職や就職するのが不安だ」
そのようにお考えになる方もいらっしゃるのではないかと思われます。

てんかんは一生に1度しか発症しない方を含めると人口の約5%になるといわれているように、珍しい疾病ではありません。またてんかんのある方でも無理なく働ける職種は多くあります。
この記事では、てんかんのある方が仕事を探すポイントと、利用できる就労サービスについて説明しています。就職に不安のあるてんかんのある方は、最後までご一読いただき、ぜひ参考にしてみてください。

てんかんとは


てんかんとは、脳の神経細胞が過剰に活動することによって繰り返し発作が引き起こされる(てんかん発作)病気です。
症状は基本的に一過性であり、てんかん発作の終了後は回復して、日常生活や社会生活に支障が出ない特徴を持ちます。乳幼児から高齢者までの全年齢で発症しますが、とくに小児と高齢者の割合が高くなっています。
症状の度合いは人によって異なり、小児期に数回発症してその後発症しないものから、頻繁にてんかん発作を繰り返し脳機能障害が進行するものまでさまざまです。
てんかんは「不治の病」と以前は考えられていましたが、現在の医療では治療可能な疾患です。抗てんかん薬の服用で、約70%の方はてんかん発作を抑えられ、薬が効かない方でも外科治療によって症状の改善が見られるようになっています。

てんかんの原因

脳の神経細胞は基本的に電気的活動をしており、てんかんはその電気的活動が突然乱れることで起こる疾病です。
てんかんの原因については、大きく次の2種類に分けられます。
・症候性てんかん
出生時の仮死状態や低酸素・頭部外傷・脳卒中・脳腫瘍・脳炎・髄膜炎・アルツハイマー病など、脳の傷害が発症の原因だとはっきりとわかっているてんかんを指します。
・特発性てんかん
脳に明らかな異常が見つからないけれども発作が生じる原因不明のてんかんです。脳神経細胞が過敏なため、微小な電気的異常にも反応してしまうのが原因ではないかと考えられています。

てんかんの種類

次にあげる表の通り、てんかん発作にはさまざまな種類があります。大きくは脳の一部に異常の出る「部分発作」と、脳全体に異常の出る「全般発作」に分けられています。

  特発性 症候性
部分 特発性部分てんかん
● ローランドてんかん
● 原発性読書てんかん など
症候性部分てんかん
● 側頭葉てんかん
● 前頭葉てんかん など
全般 特発性全般てんかん
● 小児欠神てんかん
● 若年性ミオクロニーてんかん など
症候性全般てんかん
● 早期ミオクロニー脳症
● ウエスト症候群 など

てんかんのある方が仕事をする上での困りごと


てんかんのある方が仕事をするにあたり、ストレスを感じたり困難だと感じたりする例は、次にあげるとおりです。

【てんかんのある方が仕事中に感じる困難や悩みの例】

  • 発作がいつ起こるかわからず不安である
  • 発作が起きた際に周囲に迷惑をかけてしまうのではないか
  • てんかんがあると知られると人間関係に影響するのではないか
  • 現在の仕事が自分の症状に合っているのかわからない
  • てんかんであることを職場に伝えておらず、業務上の配慮を言い出しにくい

仕事をする上でどのようなことに困っているのか、強いストレスを感じるのはどのようなときかなど、自分自身の状態についてよく知るのが、困りごとを解決する近道となるでしょう。

てんかんのある方が仕事を探すときのポイント


てんかんのある方が仕事を探すときに、押さえておきたいポイントは次の通りです。

【てんかんのある方が仕事を探すときのポイント】

  • 障がい者雇用枠の利用を検討する
  • てんかんのある方が就けない仕事を把握しておく
  • 症状についてしっかり説明できるようにしておく
  • 柔軟な働き方ができる職場を選ぶ
  • 困ったときに相談できる窓口や人がいる企業を探す

障がい者雇用枠の利用を検討する

てんかんのある方が就職する際、障害者手帳があれば障がい者雇用枠を利用する方法があります。

障がいの開示の有無や障害者手帳の有無によって、就職時の雇用枠には3種類の選択肢があります。

  • 一般雇用枠(障がいオープン):障がいがあることを開示して就職する
  • 一般雇用枠(障がいクローズ):障がいがあることを開示せずに就職する
  • 障がい者雇用枠:障がい者手帳を保有している人が対象の雇用枠

就職する際には、てんかんであることを開示する義務はありません。てんかんのあることを職場に伝えるか伝えないかは、あくまで本人の自由です。

またそれぞれの方法にはメリットもデメリットもあり、どれが良いというのは一概に言えません。上記の方法をよく比較検討し、自分に合った選択肢を選ぶのが非常に大切です。

雇用枠の選択肢についての詳細

てんかんのあることを開示して就職した場合、障がいの特性上必要と認められると、就業時間の短縮や就業時間内の通院などの配慮を求めることができます。尚、一般雇用枠においては配慮の範囲や考え方が企業によっても異なるため、一般枠では必ずしも望む配慮が十分に得られるとは限りません。
障がい者雇用枠を利用すると上記に加えて面談の機会があり、仕事上での困りごとの相談など働きやすい環境を整えやすくなるのが大きなメリットです。ただし配慮可能な職種には限りがあるため、希望する職種を選べるとは限りません。
障がい者雇用枠を利用するには、障害者手帳が必要です。
てんかんのある方の場合は「精神障害者保健福祉手帳」の対象となります。どちらもお住まいの自治体への申請となりますので、必要のある場合は担当窓口へ問い合わせましょう。
てんかんのあることを開示せずに一般雇用で働く場合、上記のような配慮は基本的に受けられません。人によっては心身ともに負担となりかねないことや、突然発作がおこった際に周囲が適切な対応を取れない可能性があるので注意が必要です。

てんかんのある方が就けない仕事を把握しておく

法律の関係上、てんかんのある方は就ける仕事に制限のある場合があります。

【てんかんのある方が就けない仕事】*一部例外あり

  • 自動車免許が必要な仕事
  • 飛行機操縦者
  • 船員
  • 鉄砲や刀剣が必要な仕事
  • 狩獣免許が必要な仕事

上記にあげた仕事はすべて免許が必要であり、てんかんのある方の取得に一定の制限がかけられています。

たとえば自動車免許であれば、大型免許と第二種免許の取得はできず、普通自動車免許にも「運転に支障のある発作が過去2年以内に起きていない」「医師の診断が必要」など、細かい条件が課されます。

条件をクリアして免許を取得して運転するのは可能ですが、発作の起きる可能性が少しでも残っている場合は、運転手として働くのは避けたほうがよいかもしれません。

法律が変わって就業可能となるケースもみられるため、できる仕事に変わりはないか新しい情報を常に確認するのをおすすめします。

症状についてしっかり説明できるようにしておく

自身の症状について把握して説明できるようにしておくのも、てんかんのある方が仕事を探す上でのポイントです。

てんかんのあることを開示して就業する場合、企業と話し合いのうえ合理的配慮を受けることができます。

  • どんな時に発作が起きやすいか
  • 発作が起きた際どうしてほしいか
  • 特に負担が大きいと感じる作業はどれか

就職の際は、企業へ上記のような自身の疾患や対処法について、あらかじめ説明しておきましょう。そうすることで企業の理解度も高まり、職場内の配置や勤務体系など適切な配慮を受けやすくなります。

働きやすい職場にしてもらうために、自身の状況を企業に説明して理解してもらうのが大切だといえるでしょう。

柔軟な働き方ができる職場を選ぶ

自身の症状に合わせて柔軟な働き方が選べる職場を探すのも、長く働くには有効な方法です。
てんかん発作を起こさないためには、適切な睡眠、定期的な服薬・通院、日々の体調管理などが大切です。自分のペースを保てる職場を選べば、生活のリズムを整えやすく、発作を抑えるには有効となります。

  • フレックスタイム制や時差出勤など、出勤時間の配慮
  • 定期的な通院の許可や適度な休憩など、疾病への配慮
  • 自宅から近い職場や在宅勤務を選択できるなど、出勤場所への配慮

たとえば上記のような働き方が認められる職場であれば、無理なく働ける方も多いでしょう。

困ったときに相談できる窓口や人がいる企業を探す

企業内に困りごとのある場合に相談できる窓口があれば、働く上で安心感を得られます。

近年、メンタルヘルスなど従業員のストレス対策に取り組む企業は増えており、社内に相談窓口を設置する企業も出てきました。また労働者が常時50名以上いる事業場では産業医の選任が義務付けられており、健康上の問題の相談が可能です。

このように健康上や仕事上の困りごとが相談できる窓口や人がいることで、勤務上の不安が軽減されます。

障がい者の方の転職に特化した転職エージェントなどの支援サービスでも、転職後でも仕事の相談ができるなどアフターフォローがあるところもあります。困りごとや相談ごとがある場合は、積極的に活用してみましょう。

マイナビパートナーズ紹介

てんかんのある方が活用できる就労サービス


てんかんのある方が仕事を探すにあたり、困りごとや不安を相談できるさまざまな就労サービスがあります。
【てんかんのある方が活用できる就労サービス】

  • 就職移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 転職エージェント

就労移行支援事業所

「就労移行支援事業所」は、一般就労を目指す求職中・離職中の障がい者の方に対して、就労に必要な知識と能力の訓練をする通所型の支援サービスです。

地方自治体から指定を受けた事業所で運営されており、令和2年現在で全国に3,301カ所あります。

【就労移行支援事業所で受けられる支援内容】

  • 一般就労へ向けた訓練、適性に合った職場探し、職場定着の支援など
  • 個別支援計画の進捗状況に応じた、職場実習などさまざまなサービスを組み合わせた支援
  • 標準で24ヶ月以内の利用可能(必要性が認められた場合最大1年間の更新可)

職業スキル・体調管理・症状との向き合い方など、一人ひとりに合わせたサポートをしてもらえます。
サービス終了後に一般就労へ移行した方の割合は54.7%(令和元年)と、一般就労を目指すてんかんのある方にとってはありがたいサービスです。

地域障害者職業センター

「地域障害者職業センター」は「独立法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が手掛ける、障がい者の方に対して専門的な職業リハビリテーションサービスを提供する目的の事業です。

各都道府県に設置されており、受けられる支援内容はおもに次の通りです。

【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】

  • カウンセリングによる一人ひとりに合わせた職業リハビリテーション計画の策定
  • 作業支援や就活・職場対応スキル講習などの職業準備支援
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)による雇用に対する援助
  • 職場復帰するためのリワーク支援 など

地域障害者職業センターでは職業紹介や職業訓練はしておらず、あくまでも職業選択や職業生活に関するサポートがメインとなります。ハローワークや障害者就業・生活支援センターとも連携しており、一人ひとりに合わせた支援が可能です。

障害者就業・生活支援センター

「障害者就業・生活支援センター」(なかぽつ・就ぽつとも呼ばれる)は、身近な地域において就業・生活における一体的な支援をおこなう機関です。厚生労働省から委託された事業所が全国338カ所に設置されています(令和4年4月1日現在)。
受けられるおもな支援については、次の通りです。

【障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容】

  • 就業面での相談支援(就業準備訓練、職場実習、職場定着に向けた支援など)
  • 障がい者雇用について、企業に対する助言
  • 日常生活・地域生活に関する助言(自己管理、地域生活、生活設計への助言など)
  • 関係機関との連絡調整

障害者就業・生活支援センターは近隣の障がい者の方が対象の施設のため、より地域に密着したサービスが受けられます。就職相談だけではなく生活相談も受け付けているため、さまざまな相談をしたい方にマッチする支援といえるでしょう。

ハローワーク

「ハローワーク」は、厚生労働省が全国に設置している公共職業安定所です。令和4年4月現在、全国に544カ所設置されています。障がいに関する専門的な知識のある担当者がいる窓口を設けてあり、仕事に関する情報提供や就職相談などのきめ細やかな支援がなされています。

おもなサービスは、次の通りです。

【ハローワークで受けられる支援内容】

  • 職業相談・職業紹介
  • 障がい者の方向け求人の確保
  • 他の就労支援機関と連携した就職支援
  • 採用面接時の同行・採用後の継続的な支援

ハローワークでは、おもに就業に関する支援が受けられます。他の就労支援機関と連携しているため、相談内容に応じて適切な機関を紹介してもらえます。
てんかんのあることで就職に不安を持つ方は、専門窓口を訪問して困りごとを相談してみるとよいでしょう。

転職エージェント

「転職エージェント」とは、求職者に対して個別に専門のキャリアアドバイザーがつき、さまざまなサポートを受けながら転職先を紹介してもらえるサービスです。
転職エージェントには、障がい者の方の就職を専門で取り扱う「障がい者転職特化型」のところがあります。
【転職エージェントで受けられる支援内容】

  • キャリアアドバイザーによるカウンセリングと転職活動全般のサポート
  • 就職市場・業界情報の情報提供
  • 書類添削・模擬面接などの採用試験対策
  • 企業への応募や面接日程の調整
  • 転職後のアフターフォロー

転職エージェントに登録することで、専門知識を持つキャリアアドバイザーからの丁寧なサポートを受けられます。
てんかん発作が原因で転職活動に不安のある方でも、キャリアアドバイザーに相談しサポートを受けながら転職活動を最後まで進められるのが特徴です。

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まとめ

てんかんのある方にとって「発作が起きて迷惑をかけてしまうのではないか」という点が、就業するうえでの懸念になるケースがあります。しかし、自身の症状を周囲へ説明し、職場の理解と合理的配慮を受けることで、不安なく働ける可能性が高まるでしょう。

自分の症状や対処法を説明し、てんかんに理解の得られる職場を探すことが、就職のカギとなります。転職エージェントなどの各種就労サービスをうまく利用すると、より自身の希望する働き方にさらに近づけるでしょう。

【本記事監修者】
佐々木規夫                

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

 

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