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精神障害がある方の障がい者雇用の状況と就労サービス|長く働きやすい職場とは?

目次

精神障害のある方にとって、どのような仕事ができるのか、等級によって異なる点は何かという疑問を持つことは当然のことではないでしょうか。また、仕事を続けるのが辛いとお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、就職・転職活動を検討している精神障害のある方や、最近障害者手帳を取得したばかりの方に向けて、精神障害のある方がどのような仕事ができるのか、抱えがちな困りごとや利用できる支援などについて詳しくご紹介します。

精神障害とは


また、障害者基本法では、精神障害のある方について、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」としています。
精神障害の主な種類は以下の通りです。

  • うつ病:意欲の低下や気分の落ち込むなどの症状が続くことで、生活に支障をきたす
  • 双極性障害(躁うつ病):躁とうつの気分の激しい波のを繰り返し、生活に支障をきたす
  • 統合失調症:脳の機能の統合に支障が生じて、考えや気持ちがまとまらず、生活に支障をきたす
  • てんかん:脳にある神経細胞の異常で、発作が繰り返し起こり、生活に支障をきたす

精神障害の等級

精神障害者保健福祉手帳とは、「一定の精神障害の状態にあるために、日常生活もしくは社会生活に一定の制約がある」ことを認定して交付される手帳のことです。
障がいの程度により等級が決まっており、1級・2級・3級があり、数字が若いほど程度が重くなります。等級と判断基準は以下の通りです。

等級 判断基準
1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

精神障害者保健福祉手帳の交付を受けると、福祉サービスを受けられますが、等級の違いによって受けられるサービスの範囲は異なります。

精神障害のある方の雇用状況

平成30年より、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。令和3年の障害者雇用状況集計結果によると、民間企業の雇用障がい者数は59万7,786人でした。うち精神障害者は98,053人であり、前年より11.4%増加しています。
2017年のデータですが、就職後3か月時点の定着率は69.9%、就職後1年時点の定着率は49.3%と、他の障がいに比べて低いという課題がありました。
障害者の職場定着率をめぐっては傾向があります。
企業規模でみると、従業員数が多い企業であればあるほど高くなり、1年後定着率は1,000人以上の企業(回答者882人)では65.8%、50人未満の企業(回答者934人)では46.9%と20%近くの差がありました。
就職前に訓練を受けた障害者(回答者673人)は1年後定着率が72.7%と、訓練を受けていない障害者(回答者2600人)の54.7%に比べておよそ18%の差が出ました。
就職において支援制度を利用した障害者(回答者871人)は1年後定着率が74.3%と、支援制度を利用していない障害者(回答者2402人)の52.7%に比べて20%以上の差が出ました。
※引用元:障害者の就業状況等に関する調査研究2017年高齢・障害・求職者雇用支援機構による統計

就労サービスが浸透しつつある2022年、精神障害のある方の定着率は改善傾向にあります。

精神障害のある方が仕事をするうえで困っていること

精神障害のある方は、就職するにあたり以下のような悩みや不安を抱えていることがあります。

  • 体調が安定しないことがある
  • 疲れを感じやすい日がある
  • 仕事のパフォーマンスが安定しにくいことがある

上記以外にも、人によって悩みや不安は千差万別です。「採用されるのは難しいのでは」「正社員になるのは難しいのでは」「職種や仕事内容が限定されてしまうのでは」などといった悩みや不安をお持ちの方も少なくありません。
悩みや不安以外にも、さまざまな症状が出ることがあります。自分はどのようなことに困っているのか、どのようなことに強くストレスを感じるのか、働くうえでの注意点など、自己理解を深めておくことも就職活動や就職後の定着のために大切です。

精神障害のある方が長く働きやすい職場環境とは

長く働きやすい職場の条件についてですが、精神障害があるからといって基本的に業種・職種が限定されることはありません。
ただし、てんかんなどで意識がなくなるようなケースでは、法律上就くことができない職種も一部あります。
以下の条件が整えば、さまざまな業種・職種で働くことが可能です。
【精神障害のある方が働きやすい職場環境】

  • 勤務形態や制度が柔軟
  • 困った時に相談できる窓口がある
  • 精神障害への理解があり、受け入れ環境が整っている

勤務形態や制度が柔軟

フレックスタイム制、短時間勤務、在宅勤務など、勤務形態や制度が柔軟な職場では、さまざまなニーズのある方が働くことが可能です。

精神障害のある方には、「通勤ラッシュを避けたい」「短時間なら働ける」「自分に合った環境なら集中できる」というニーズをお持ちの方もいますので、こうした方にとっても働きやすいと言えるでしょう。
精神障害者の雇用実績がある職場に障がい者雇用枠で就職する、あるいは障がい者雇用を目的とした企業の特例子会社に入社する場合には、比較的配慮を求めることができる傾向があります。
なお、一般雇用枠においては配慮の範囲や考え方が企業によっても異なるため、一般枠では必ずしも望む配慮が十分に得られるとは限りません。

困った時に相談できる窓口がある

障がい者に限りませんが、辛いと思った時に相談できる窓口が社内にあることは、社員のメンタルヘルスの点で非常に重要です。
平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、労働者数50人以上の事業所について、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は90.7%。「取り組んでいる」と回答した事業所のうちメンタルヘルスに関する事業所内での相談体制の整備を行っている事業所は50.1%でした。労働安全衛生法では、労働者数50人の事業場は産業医を選任することと定められています。
また、就職の際に、障がい者向け転職エージェント、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センターなどを利用した場合、就職後も相談や面談などの形でアフターフォローが利用できることがあります。

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精神障害への理解があり、受け入れ環境が整っている

精神障害のある方が長く働くためには、制度が整っているだけでなく一緒に働く人の障がいに対する理解があることも大切です。
平成25年度に厚生労働省が発表した精神障害のある方の離職理由の調査によると、「職場の雰囲気・人間関係」を離職理由に挙げる回答が多くを占めています。

引用元:厚生労働省

近年、社員に対して障がいのある方への理解教育を行っている企業もあります。
厚生労働省が「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座(1日)」を全国各地で実施していますが、社員がこれを受講して「精神・発達障害に一定の知識、理解がある」と意思表示する企業はその一例です。
また、障がいのある方とその他の従業員によるワーキンググループを社内に作り、理解啓発活動を行っている企業もあります。
障がいがあることで参加が強制されることはありませんが、「このようなスペースがあると安心する」という方も少なくありません。

精神障害のある方が利用できる就労サービス

精神障害のある方が就職するにあたって、悩みや不安を相談できるサービスは多数あります。精神障害のある方が利用できる就労サービスは以下の通りです。
【精神障害のある方が利用できる就労サービス】

  • 就職移行支援事業所
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 転職エージェント

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく就労系福祉サービス。就労移行支援事業所の運営主体は、障がい者向け転職支援を行う民間企業や、障がい者支援NPO法人など事業所によってさまざまです。
就労移行支援事業所によっては特色があり、精神障害のある方に特化した事業所もあります。
利用できるのは、一般就労または在宅での就労・起業を希望する65歳未満の方。通所するには、障害福祉サービス受給者証が必要です。
週数回からの通所によるサービスを原則としつつ、令和2年以降は在宅訓練も取り入れられました。原則として2年間利用可能ですが、途中で別の就労移行支援事業所への変更もできます。
地域障害者職業センターは、障がい者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスを実施しています。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営主体で、全国47都道府県に1か所以上設置。障がい者職業カウンセラー等を配置し、ハローワーク(公共職業安定所)、障害者就業・生活支援センターとの密接な連携のもと、就職や職場復帰を目指す障がい者の方に対する支援・サービスを提供しています。
障害者就業・生活支援センターは、障がい者の職業生活における自立のため、就労移行支援事業者、地域障害者職業センター、ハローワーク、事業主、医療機関、福祉事務所といった関係機関との連携のもと、身近な地域において就業面・生活面における一体的な支援を実施。障がい者の雇用の促進および安定を目的としています。運営主体は社会福祉法人、NPO法人、医療法人などさまざまです。
ハローワークは、就職困難者を中心に雇用のセーフティネットとしての役割を担う、厚生労働省の機関です。
地域の雇用行政機関として、職業相談、職業紹介、雇用保険などの業務を一体的に実施。ハローワークには一般向け窓口の他に、障がいのある方に向けて専門的に相談を受ける窓口があります。
障がい者向け転職エージェントでは、障がい者雇用の専門知識を持つキャリアアドバイザーによるカウンセリング、求人紹介、応募・面接サポート、入社後のフォローを受けることが可能です。
転職エージェントは、障がい者雇用の実績や配慮体制、キャリアパス、正社員登用に関する情報など、企業に関する詳細な情報を把握しています。
そのため、障がいに対する理解がある職場を探しやすく、適性があると考えられる職業の提案や入社後のフォローも受けられるのがメリットだといえるでしょう。

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まとめ

今回は、精神障害のある方に向けて、雇用状況や仕事を続ける際の困りごと、就労サービスについて詳しく解説しました。
精神障害のある方でも、理解のある職場に就職し、長く働くことは可能です。また、寄り添ってくれる支援もさまざまありますので、ご自身に合った方法を見つけ、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

【本記事監修者】
佐々木規夫様                  

産業医科大学医学部医学科卒業。
東京警察病院を経て、HOYA株式会社の専属産業医及び健康推進G統括マネジャーとして健康管理に従事。現在は上場企業や主要官庁を中心に産業医をしながら、精神科医としても勤務している。また、北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場コミュニケーション、組織公正性に関する研究や教育を行なっている。
【資格】
産業医、精神科専門医、精神保健指定医、医学博士、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント、社会医学系専門医・指導医、メンタルヘルス法務主任者

 

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