2025年07月08日
おすすめ企業インタビュー|パナソニックグループ

家電や住宅設備をはじめ、製造・物流現場の機器やシステム、モビリティ・社会インフラを支える電池や電子部品など、幅広い事業を展開するパナソニックグループ。2022年にパナソニック株式会社が持株会社制に移行し、パナソニックホールディングス株式会社を親会社とした9の事業会社が発足しました。その全体の採用を担っているのが、事業会社のひとつ、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社(PEX)です。今回は、同社の金子 健志様と、松野 颯史様の2名に障がい者雇用の新卒採用や、障がいのある学生に向けた採用イベント、グループ全体の障がい者雇用の取り組みについてお話を伺いました。
リクルート&キャリアクリエイトセンター 採用部 採用企画課 多様性採用ユニット 金子 健志様
●障がい者採用のスタンスや流れについて教えてください。
当社では、一般雇用と障がい者雇用で採用基準や処遇などに違いを設けていません。特別な採用枠も設けておらず、新卒採用でも中途採用でも、応募方法は同じです。新卒の場合だと、エントリーする際に技術系、事務系、クリエイティブ系のいずれかを選ぶ「職種選択アンケート」があるのですが、そこではさらに障がいのある方向けのコースが選択できます。同コースを選ばなければその後の選考は一般の学生と同じように進み、障がいのある方向けのコースを選ばれた方には、より時間をかけて丁寧なマッチングを行います。
●障がいのある方の働きやすい環境づくりのために工夫されていることはありますか?
グループ全体では障がい者雇用の歴史も長く、障がいのある社員もたくさん在籍しています。ただ、全体の規模も大きいので、今でも職場として初めて障がいのある方を迎えるというケースも少なくありません。必要な時に必要な情報が取れるようガイドブックを整備したり、事業会社によっては責任者や人事社員を対象に障がいを理解するための研修を開催しているケースもあります。
また、障がいのある方のなかでも聴覚障がいの方の割合が大きかったので、リアルタイム音声認識のシステムを全社で導入したり、大きな研修や会議に手話通訳を入れたりもしています。
最近では、精神障がいのある従業員も増えてきました。私たちも障がいについては専門家というわけではないので、より適切なサポートができるよう、外部の専門家による「ワークサポート相談室」を開設しました。当事者の方が自身の困りごとを相談するのはもちろん、人事や上司、まわりの方が適切なサポートをするための相談もできる窓口となっています。
ほかにも、バリアフリー化が充分とは言えない事業所などで、車いすの方が無理なく移動できるようなルートを示したアクセシブルマップの作成に、各拠点で取り組んでいます。
●グループ全体で多くの障がいのある方が在籍されているとのことですが、社内のコミュニティがあれば教えてください。
障がいのある方が1つの職場に何人も所属しているケースは少ないので、以前はなかなか当事者の方同士が職場を超えて交流する機会を持てていませんでした。そこで、最初は人事主導で、当事者の交流イベントを何回か実施したことがありました。
その後、コロナ禍に突入してしまったのですが、それを発端に社内のSNSの環境が急速に整備されました。その流れのなかで、当事者の有志の皆さんがオンラインコミュニティでの活動を活発化させてくれて、今は数百人規模のコミュニティになっています。
主に昼休みに、手話だけのイベント、あるいはチャットだけのイベントを行ったり、定期的な勉強会や、ゲストを招いての講演会なども開催されています。このコミュニティには当事者だけでなく、活動に賛同する一般の社員も参加しています。
もちろん、当事者の皆さんが困りごとを相談しあったりもしています。経験や事例を共有することで、それぞれの業務や働く環境の改善にも活かされているようです。
●障がい者採用や、障がいのある方とともに働くうえで大切にされていることはどのようなことでしょうか?
弊社の創業者である松下幸之助はさまざまな言葉を残しています。そのひとつが「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」です。これは当社が創業以来、理念として掲げているもので、私たちはこの使命を達成するために事業活動を行っています。一般採用でも、障がい者採用でも、この理念に「共感できる」と思っていただける方々と一緒に働きたいという点は変わらない部分です。この言葉が表現する社会の実現は決して簡単なことではありません。それでも、私たちは、少しでもそこに近づくために、愚直に取り組み続けることを大切にしています。
また、障がいのある方ならではの経験や知見はとても大切なものです。それぞれの個性や知識を持ち寄り、そこから生まれる気付きやアイデアがこの世界をより便利で豊かなものにしていく、つまり「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」に少しずつ近づいていく、そう考えています。
リクルート&キャリアクリエイトセンター 採用部 採用企画課 多様性採用ユニット 松野 颯史様
●昨年から貴社では障がいのある学生向けの「トライアウト」を開催されているそうですが、どのようなイベントなのでしょうか?
松野さん:昨年第一回目を開催しました。障がいのある学生17名の方が集まってくださり、パナソニックグループの事業会社の人事や障がいのある社員も参加しました。
パナソニックグループの概要や仕事について学生の皆さんに知ってもらったり、「インフォマティブストーリー」というプログラムでは、当事者として障がいのある社員の方に自分の経験を語ってもらったりもしました。
「トライアウト」の一番の目的はワークなどを通じて、学生の皆さんに自己理解を深めていただき、そのうえで自分のアピールポイントを相手にどう伝えればよいかなどのコミュニケーション方法を習得してもらうことです。
●「トライアウト」を発案するにいたった経緯を教えていただけますか?
金子さん:パナソニックグループでは以前よりOJT インターンシップに力を入れて取り組んできていますが、障がいのある学生の参加は、まだまだ限られているのが現状です。コロナ禍をきっかけに対面でのイベントも減っており、お互いに理解を深める新たな機会が必要だと考えていました。
また、各大学の障がい学生支援を担当されている方などからは、一般の学生に比べて、障がいのある学生は、インターンシップなど就業体験をする機会が限られているという話を前々から聞いていたことも企画発案の発端です。
松野さん:多くの学生にとって、社会に出る前に会社の雰囲気や働くことを身近で体感する機会はとても大切なものだと思います。そのような機会が提供できればと考え、この企画を行うことに決めました。
加えて、参加する障がいのある学生の方同士が横のつながりを作って情報交換できる場にもなり得るのではないかとも考えました。
●昨年実際に開催されてみて、いかがでしたでしょうか?
金子さん:魅力ある学生の皆さんに参加いただいて、とても有意義な企画になったと思います。私たちもいろいろな採用イベントを開催していて、どのイベントでも参加者の方にはアンケートや感想を記入いただいています。今回の企画に寄せられた感想は、とても熱量の高いコメント、真摯な回答ばかりで主催者として胸が熱くなりました。
アンケートから分かったのは、障がいのある学生の中には、あのような場に来ること自体にハードルを感じる方が一定数いらっしゃるということでした。でもそんな背景があるなかでも勇気を振り絞って参加してくださり、企画に真摯に取り組んでいただけたことを本当に嬉しく思いました。
採用面接では、お互いに緊張感のあるやり取りになるので、このようなある程度フランクな場で障がいのある学生の方々とコミュニケーションができたのは人事担当としても、とてもプラスに感じています。
松野さん:自分の想いをまっすぐに発信する学生の皆さんが印象に残っています。「これまでは自分のことを発信することに対して恐怖心があったけれど、このように伝えれば自分の持ち味が相手に伝わるということが分かった」などと感想をいただき、私たちの企画の目的がしっかりと学生の皆さんに伝わったのではないかと思います。
多くの皆さんが、就職活動や、その先の社会に出るということに対して前向きに捉えられるようになったという趣旨の感想を寄せてくれたことがとても嬉しかったです。
また、事業会社の人事担当や先輩社員からも「障がいのある学生の皆さんと対話を重ねることで勉強になった」「自分の経験を伝えられて、本当に参加して良かった」という声が届きました。学生の皆さんと会社の双方にとって、とても実りが多い企画になったと思います。
●今年の開催に向けて、新しい施策があれば教えてください。どのような学生にこの企画に挑戦してほしいなどのお考えはありますか?
松野さん:前回から大切にしている自己理解や、自己PRについてはもちろん、さらに就職活動で大切になる企業理解について知ることができるワークなども増やす予定なので、より良い就職活動のきっかけにしていただけるのではないかと思います。
また、パナソニック創業者松下幸之助は「素直な心」をとても重視していて、それが成功の鍵であると説いています。そのようなことを学生の皆さんにも伝えて、実感していただけるような企画も今回から実施します。
今の時点で特別なスキルを持っている学生の方に参加してほしいとは思っていません。「自分自身としっかり向き合いたい」「これからの働き方をワークを通じて考えたい」などと考えている方に参加いただけたら嬉しいです。
金子さん:一般的に障がい者雇用についてはまだまだ情報が少なく、誤解が多いように思います。情報がないがゆえに「障がい者だからこのような働き方しかできないだろう」…などと、固定概念で自分の将来を限定してしまうことがあるとしたら残念です。
世の中には本当にたくさんの会社があって、さまざまな働き方があります。障がいのある学生の皆さんにも正しい情報を得て、納得のいく判断をして社会人の第一歩を踏み出していただきたいです。前向きに社会に出ていくための準備をする機会になればという想いで、今回企画を考えています。チャレンジしてみたいという方のご参加をお待ちしています。
●最後に、障がいのある学生の採用において重要視していることを教えてください。
金子さん:採用のときに私たちが重要視しているポイントは、端的に申し上げると「勝てる武器」「志」「人間性」の三点です。
「勝てる武器」については仮に、新卒の今の時点で持っていなくても今後身につけられる素養があるかどうかということ、「志」はその人とパナソニックが掲げる目標がどれくらい重なるかということをそれぞれ見ています。
そして最後の「人間性」は、自然とまわりの方が協力したくなるような人間的な魅力を持っているかどうかです。障がいがあるということは、ある一定の困難さがあると私たちは理解しています。それを克服するためには自分から困難さをきちんと発信して、自分が最も力を発揮できる環境を、まわりの協力を得て整えられることが大切です。きちんと発信いただければ、受け入れてくれる社員がいて、助けになる仕組みや環境があるのがパナソニックグループです。そのような人間性豊かな方に、ぜひ仲間になっていただきたいと思っています。
昨年「トライアウト」に参加した事業会社の社員の方から届いた感想とメッセージの一部をご紹介します。
・学生のうちは考えられる範囲が狭い、見えている世界に限界があることは確かです。そんな時は、周囲をたくさん頼ってください。自分から”求めていく姿勢”があれば、きっと誰かが応えてくれると思います。
・私が新卒で就活をしていたときは、障がいがあるからと自分自身で可能性の幅を狭めていたと思います。でも今は、障がいがあることを時に忘れてしまうほど、やりたいことに挑戦できています。
・自分のやりたいことがはっきりとしていない方もいれば、「こういう仕事がしたい!」とイメージを持っている方もいると思います。 色々な企業の話を聞き、自分に合う会社を探してみてください。 悔いのない選択ができるよう頑張ってください!
・障がいのある先輩として、皆さんの生きにくさや社会に出るうえでの不安などを少しでも軽くして、目的をもって何かのために働くことのやりがいや楽しさを伝えられていたらいいなと思います。
・就職活動中、私はまさか今の会社で働くことになるとは思っていませんでした。未来というのは自分が思っている以上に読めないものです。この先には思いがけないことがあるかもしれない、そう信じて頑張ってほしいなと思います。
・就職活動の時にこのようなイベントに参加できていればもっと具体的に就職後の自分をイメージできただろうなと思いました。また学生さんの熱意や企業研究の深さをとても感じました。周囲に頼って頑張ってください!
・パナソニックグループはみなさんの障がいに対し、どのようにすれば一緒に気持ちよく働くことができるかを考えてくれる人がたくさんいる会社だと感じます。 みなさんと一緒に仕事できることを期待しています。
・私の就職活動や社会人としての経験が少しでも学生の皆さんの助けになれたのなら嬉しく思います。皆さんのお話を聞くうえで私たち自身も学ぶことも多かったです。不安なこともあると思いますが、いろんな人を頼ってください。応援しています。